決して“受難”ではない
11年卒学生の就職活動
2011年卒業予定の大学生の10月1日時点における就職内定率(厚生労働省・文部科学省『大学等卒業予定者の就職内定状況調査』)は、57.6%と過去最低を記録した。この非常に厳しい数字から、バブル崩壊後に起きた「“就職氷河期”の再来だ」という声も聞こえてくる。しかし実際は、当時のように求人数は激減しておらず、企業の内定出し状況は10年卒学生と比較して大きく変わっていない。
ワークス研究所が10年4月に行った『ワークス大卒求人倍率調査』によると、11年卒者の大卒求人倍率は1.28倍と10年卒の1.62倍より低下している。しかし、10年卒の採用予定数は当初計画の72.5万人から最終見通し60.4万人へと大幅に減少したのに対し、11年卒者の採用予定数は当初計画の58.2万人から最終見通し59.1万人と微増し(『ワークス採用見通し調査』10年12月)、前年よりやや減少した程度に過ぎないことがわかる。
バブル崩壊後の急速な新卒求人数の激減は、人材の空洞化を招き、その後の人材育成にマイナスの影響を与えた。そこで、多くの企業が当時の教訓を活かして景気が大きく後退したリーマンショック後も一定数の採用を続けているのが昨今の状況だ。
つまり、リーマンショックが戦後最大の景気の落ち込みと言われたことと比較すれば、新卒求人数の減少幅は決して大きいものではない。そうした状況にもかかわらず彼らの状況を“受難”ということには、少し違和感さえ覚える。
過去最低の内定率は
“学生の二極化”が原因
では、なぜ急激に環境が悪化したわけでもないにもかかわらず、内定率は過去最低にまで落ち込んだのか。それは、一部の優秀な学生に内定が集中しているためである。
「学生の就職難」という報道やキャリアセンターの指導を受け、危機感のある学生は早い時期から就職活動の準備をはじめる。そして彼らは、本来であれば自分が希望する会社ではなくてもまず1つ内定を得て、安心して本命にあたろうとする傾向がある。