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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

欧州経済は「基本的な構造」を押さえると理解しやすい

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第50回】 2016年11月16日
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 現在、欧州の7~9月の経済成長率(GDP伸び率)は1.4%と悪くない。2017年の予想も1.5%となっている。理由の一つはドイツの経済成長率が1.9%と高いこともある。EU離脱で紛糾している英国もポンド安のため観光と輸出が伸び、今期はマイナス成長かと考えたが0.5%の成長率になっている。

 日本と比べて、そこそこに見えるが、英国のEU離脱、南欧の財政悪化など、欧州を取り巻く状態は良くない。しかし、よく見ると、昔から変わらない基本的な経済的な構造がいつも見えてくる。この構造を知っていると欧州経済に対してより理解が深まることになる。

4つのグループに分けて
欧州を捉える

 筆者は欧州について考えるときに、以下の様な4つのグループに国を分けて考えている。

 (1)ゲルマン系:ドイツ・オランダ・ルクセンブルグ等
 (2)ラテン系:フランス・イタリア・スペイン・ポルトガル等
 (3)北欧系:英国・デンマーク・スウェーデン・ノルウェー等
 (4)東欧系:ポーランド・チェコ・ハンガリー・ルーマニア等

 まず、ゲルマン系とラテン系の関係であるが、経済や産業の分野において随分違う。車などの産業(製品)を見ると感触としても分かると思うが、ゲルマン系はドイツをはじめとして経済が強く、ラテン系はやや弱い。また、物価に関しても、ゲルマン系は厳格に物価(インフレ)管理をしており、ラテン系はインフレになりやすい傾向がある。そのためユーロ導入前の通貨統合の準備期間でも、“常に”ゲルマン系の通貨は強く ラテン系の国々が弱く、為替レートはよく“股裂き”の状況になって制度が破綻することとなった。

 現在も、イタリア・スペイン・ポルトガルなどが、財政赤字や高失業率に苦しんでおり、さらに金融機関の経営状況も悪い。財政赤字はユーロ圏の基本法・リスボン条約に決められたGDP対比の財政赤字率、3%を突破する(余談だが、この規定は日本にこそ必要なものである)。また、相変わらず経済を改善できないギリシャもこのグループに入る。

 このような国の性質について、以前、フランクフルトにいた時に、引退したドイツ連邦銀行(ドイツ・ブンデスバンク)のシュレジンガー元総裁に教示いただいた。彼はエコノミスト出身であり、「それを“メンタリティ(mentality)”というんだ」と言って、経済分析に使っているとのことであった。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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