日本に生まれて日本で暮らす限り、イスラム教徒と接する機会はめったにない。ところが、世界に一歩踏み出せば、約4人に1人はイスラム教徒という現実が広がる。
イスラム教徒は全世界で約16億人ともいわれている。中東ばかりではなく、インドネシアやマレーシア、バングラデシュなど、若くて伸び盛りの新興国ほどその人口は多い。
という訳で、日本で報じられるイスラムの話題も、一部の過激派によるテロや戦争の話から、経済の話へと急速にシフトしてきている。その最たる分野が、「食」である。
イスラム教徒の食事を支える
認証マーク「ハラル」とは
「ハラルって聞いたことありますか?」と、イスラム教徒のマユミさん(仮名、29)が聞く。
「ハラル?」
なんのことやらわからずにいると、マユミさんがその認証マークの付いたパッケージを見せてくれた。
「これが、その認証マークです」
ハラルとは、アラビア語で「許されているもの」を意味する。イスラム教徒にとって、目の前の食品がハラルであるか否かは、大きな問題だという。
イスラム教では豚肉やアルコール類の摂取が禁じられ、牛や鳥、羊などの肉に関しても、戒律に沿った処理・加工がなされたものでなければ口にできない。「ハラル」とはつまり、イスラム教徒が安心して購入できる商品のことである。
その認証マークを取得するのは、日本で言うと、ハサップ(HACCP)などの食品衛生基準をクリアしたり、ISOを取得したりするのに似ている。マークの認証機関は国によって異なり、その認証の範囲は医薬品やサプリメント、肌に直接塗る化粧品、はたまた、ハラルと非ハラルを分けて扱う物流システムにまで及ぶ。「宗教的に安心」というだけではなく、「安全・衛生面でも安心」というお墨付きが、ハラルマークである。