ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
安東泰志の真・金融立国論

プライベート・エクイティ・ファンド抜きの
金融立国は可能か
~既成概念と既得権益に縛られた
新成長戦略の決定的欠陥

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第4回】 2011年1月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

プライベート・エクイティ・ファンドとは何か

 産業金融の担い手と言えば、日本では、銀行と証券会社、そして一部リース会社やファクタリング会社などが思い浮かべられることが多いだろう。しかし、欧米に目を向けると、全く違った景色が見えてくる。

 特にプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、欧米では、銀行・証券と並ぶ産業金融の第3の柱として、新興企業の育成、企業の再生、産業再編などに積極的な役割を果たしている。日本が新金融立国を考える際には、既成概念や既得権益をいったん忘れ、既存の銀行・証券だけでなく、PEファンドにも積極的な役割を与えなければ効果は全く期待できないと言っても過言ではない。

 PEファンドとは、主として未公開の企業の株式を取得し、自ら経営に積極的に参画してその企業価値を向上させ、上場や産業再編といった出口に導く投資ファンドのことである。新興企業に投資するPEファンドをベンチャーキャピタル(VC)、成熟期の企業に投資するPEファンドをバイアウトファンドと呼ぶ。株式の取得は、通常は経営陣との合意による円満なものであり、いわゆるアクティビストファンドとは全く異なる。

 米国では第二次世界大戦後に2つのVCが誕生し、1970年代にかけて、戦後設立されたファミリー企業の株式の受け皿として発展を遂げた。1978年に米国労働省が年金基金に「プルーデントマン・ルール」を適用し、分散投資のために年金基金がPE投資をすることを認めたことをきっかけに、PEファンドは一気に産業金融の主役に躍り出ることになる。

 80年代には、カーライルやブラックスーンなど、今でも活躍する多くのビッグネームのPEファンドが設立され、89年には219億ドル(約2兆円)ものファンドが組成されたが、この10年間で約10倍の規模に拡大したことになる。

 ちなみに、その後20年間を経て2006年度には約2500億ドル(約21兆円)ものファンドが組成されている。この間、VCは2000年代前半のITバブルの崩壊を経験し、バイアウトファンドも07年に投資のピークを迎えた後、08年の世界金融危機で一時的に機能停止となったものの、最近は05年のレベルにまで戻ってきている。

 金融危機と相前後して、米国の巨大ファンドは資金調達を円滑化するために相次いで上場しているほか、上場株へのマイノリティ出資など、ヘッジファンド的な動きも活発になるなど、PEファンドは現在も進化を続けている。また、PEファンドへの投資家層も、年金基金に加えて、近年はSWFがその存在感を増しつつある。

 欧州でも、07年には約1200億ユーロ(約13兆円)ものファンドが組成されるまでに発展しており、金融危機後もその3分の1程度まで減ったとはいえ、2000年代前半のレベルを維持している。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

⇒バックナンバー一覧