11月1日、ダイヤモンド・オンラインに掲載された拙稿「『日本は借金が巨額でも資産があるから大丈夫』という虚構」に対して、嘉悦大学の高橋洋一教授から、「日銀当座預金を民間銀行の『預金』と勘違いする人々へ」(11月3日掲載)と題する反論をいただいた。高橋教授の指摘は経済・財政政策の重要な問題にかかわっており、議論をより深める観点から歓迎したいが、埋蔵金の活用や日銀の国債購入は、政府の債務超過を解消し、財政再建を不要にする「魔法の杖」なのだろうか。
「埋蔵金」の取り崩しで
財政は悪化する
日銀の問題は次に論じることとして、改めて埋蔵金について整理したい。埋蔵金とは、一般に国の特別会計の剰余金や積立金を指す。具体的には、財政投融資特別会計、外国為替資金特別会計、労働保険特別会計などがある。そうした特別会計には、税法で使途が特定されている目的税や社会保険料などの独自財源などがあり、毎年の歳出と歳入の間で差が生じ、余剰となる場合があるからである(フローで歳入不足となれば、積立金を取り崩す場合もある)。
高橋教授は、会計に詳しく、埋蔵金を発掘したことで有名になった。その際、高橋教授は、「埋蔵金で債務を返済し、バランスシート(貸借対照表:以下BS)をスリム化すべきである」と主張した(『さらば財務省!』/2008年講談社 P204)。全く正しい指摘であり、異論の余地はない。“I cannot agree more.”だ。BSのスリム化については、当時の小泉政権における政府の政策にも反映された。
2005年11月に「政府資産・債務改革の基本的な方針」が経済財政諮問会議で決定され、「骨太の方針2006」(経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2006)の2006年7月閣議決定では、原則6「資産圧縮を大胆に進め、バランスシートを縮小する」の中で、「最大限の資産債務の圧縮を進める。資産売却収入は原則として債務の償還に充当し(ストックはストックへ)、債務残高の縮減に貢献する。また、資産債務を両建てで縮減し、金利変動リスクを軽減する」と記述されている。正しいことを提案し、政府の政策に取り入れられたわけで、改めて高く評価したい。