手帳の製造工程はかなり複雑だ。なぜなら、手帳は毎日のように使用され、それが1年間続く。繊細な作りだけでなく、耐久性も要求されるのだ。そんな手帳工場の全貌をお見せしよう。(週刊ダイヤモンド2015年12月12日号特集「無敵の手帳術&情報管理術」より)

“純国産”の能率手帳「ノルティ」に込められた職人技とこだわり今年も手帳売り場の主役

  純国産へのこだわり──。1949年に、日本能率協会が日本で初めて世に送り出した手帳が能率手帳(現NOLTY〈ノルティ〉)だ。日本で1、2位を争う販売冊数を誇るノルティの大半の手帳が、東京都板橋区にある工場「新寿堂」で製造されている。

 手帳を開いて文字を書き込む。数十年にわたる愛好家がいるほどの使い心地の良さは、どうやって生み出されているのか。厳選された素材はもとより、プロの職人たちの技とこだわり、それら全てが新寿堂に凝縮されている。その全貌をお見せしよう。

 まずは、印刷(写真(1))だ。用紙はノルティ専用のもので、目に優しく薄く裏写りしないものを使用している。その用紙にスケジュール欄やけい線などを印刷するわけだが、実は、「印刷を内製化している工場は少ない」(藤代純一・新寿堂生産本部副本部長)という。

“純国産”の能率手帳「ノルティ」に込められた職人技とこだわりPhoto by Takeshi Kojima

 内製化のメリットは、オペレーターが細部に至るまで調整できることにある。手帳は表と裏でけい線などの位置をピタリと合わせねばならないが、水と油が反発する原理を利用するオフセット印刷では、どうしても微妙な誤差が出てしまいやすい。それを完璧に調整できるというわけだ。

 次に、手帳を作るのに必要な部分を正確に切り出す断裁(写真(2))だ。0.2ミリメートルの線の真ん中をカットするという精度である。断裁された用紙は、けい線がずれないようにして16ページ分ずつ折る(写真(3))。手帳用紙は軽くするために薄くなっており、その分折るスピードの管理が重要となる。