このところ、“混合介護”という言葉を耳にするようになった。

 発信源となったのが、9月5日に公正取引委員会が発表した「介護分野に関する調査報告書」で、介護市場の規制改革を促すための柱として「混合介護の弾力化」の必要性を提案したのだ。

 公的な介護保険を利用する場合、現行制度では保険を使ったサービスと使わないサービスを区別する必要がある。たとえば、訪問介護による食事の支度や洗濯などは、利用者本人のものに限られ、同居家族の家事支援はできない。

 報告書では、こうした仕組みが「規制」にあたると指摘しており、見直せば事業者のビジネスチャンスが広がり、介護スタッフの賃金アップにもつなげられると期待を語る。

 これに呼応して、10月6日に規制改革推進会議が「介護サービス改革」を当面の重要事項に決定したほか、11月10日には東京都の小池百合子知事が特区制度によって混合介護の推進を表明。新たなビジネスチャンスの到来と煽る一部メディアの報道もある。

 だが、そもそも、2000年の発足当初から、介護保険は保険内サービスと保険外サービスを同時に使う混合介護が認められている。それなのに、なぜ今、公正取引委員会は「混合介護の弾力化」といった言葉を使って、規制を強調するのだろうか。

 今回は、混合介護を弾力化することでの影響を考える前提として、まず健康保険との違いから、介護保険のサービスの特徴について整理してみたい。

健康保険は必要な医療が
すべて給付対象となる

 公的な介護保険がスタートしたのは2000年4月。それ以前の高齢者介護の中心を担ってきたのは「措置制度」で、行政が必要と認めなければ介護サービスは受けられず、サービス内容も自由に選ぶことはできなかった。

 こうした問題点を改善し、保険料をみんなで拠出して介護の負担を社会全体で分担するために作られたのが介護保険で、利用者自らが申請し、利用するサービスを自分で契約する仕組みが作られた。