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医療・介護 大転換

介護事業を飛躍的に伸ばす、公取委の画期的提言

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第63回】 2016年10月12日
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ヘルパーは
要介護者にしか食事を提供できない

 訪問介護のヘルパーが、要介護者のために夕食を作る際に、帰宅の遅い同居家族の分も同時に作れば、どんなに介護家族が助かるだろうか。誰しも思うことだろう。ヘルーパーにとっては、1人前も2人前もたいして労力は変わらない。

 もちろん、家族の分のサービスは介護保険外だから、別途請求することになる。だが、現在の介護保険ではこうした臨機応変な対応は禁止されている。介護保険サービスは、要介護者にしか提供してはならないからだ

 要介護者や介護家族からすると、こうしたヘルパーのちょっとした助力があれば在宅介護がもっと続けられるのに、と考えているだろう。

 介護サービスは普通の暮らしを支えていくものであり、暮らしは家族とともにある。それなら、家族の分まで手を伸ばすのが当然だろう。

 生活者の当たり前の発想が、国の制度となるとなかなか受け入れられない。そこへ、なんと公正取引委員会(公取委)が生活者の立場から、介護保険に異議を唱えた。

 「介護保険内のサービスと保険外のサービスを一緒にしてはどうか」とする内容を含めた提言を発表したのである。一般的には「混合介護」といわれるものだ。「介護分野に関する調査報告書」として9月5日に公表された。

 公取委は独占禁止法の門番役である。独禁法は「経済の憲法」と言われ、自由な経済活動を保障する。その自由な市場競争を阻害する行為にNOと警告する。自由な競争があるからこそ、サービスや商品の質が向上し国民生活が豊かになるという考え方に基づく。

 企業が相談して価格協定を結んだり、独占的な大企業が現れて価格や商品内容を勝手に決めてしまわないように活動してきた。内閣府の外局である。

 その公取委が、介護保険制度に口を出してきた。「おやっ」と思われるかもしれない。介護分野は普通の民間市場とは異なる。公取委が介入するのはお門違い、とみられがちだからだ。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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