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バブル崩壊で表舞台を去った10人の「漢」たち

『バブル 日本迷走の原点』

成毛 眞
【第26回】 2016年12月2日
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※画像はイメージです。

好漢は必ずしも
善人とはいえない

『バブル 日本迷走の原点』
永野 健二
新潮社
288ページ
1700円(税別)

 本書『バブル 日本迷走の原点』は「始動」「膨張」「狂乱」「精算」の4章、全21節で構成された好漢譚として楽しむことができる今年一番のおすすめ本だ。各節ごとにそれぞれ10人ほどの好漢たちが登場し、各々の役割を演じては舞台を去ってゆく。その好漢たちとは時の首相であり、日銀総裁であり、証券会社の経営者であり、銀行の頭取たちだ。もちろんバブル紳士も高級官僚も登場する。

 広辞苑によれば、好漢とは「好ましい男」。けっして「正義の男」でも「立派な男」でもない。男として魅力的ではあるが、どこか危ういところを持っている人物たちだ。著者は同時代の取材対象になった好漢たちと密に接しながらも、その妖しい魅力に惑わされることなく、現代政治経済史の証言者に徹したジャーナリストだ。しかし、その彼もまた好漢なのである。

 その証左は本書冒頭の一文だ。

 「バブルとは、グローバル化による世界システムの一体化のうねりに対して、それぞれの国や地域が固有の文化や制度、人間の価値観を維持しようとしたときに生じる矛盾と乖離であり、それが生みだす物語である」とするのだ。

 経済学的な定義としてバブルとは、ファンダメンタルズから乖離した資産価格の上昇、とでもいうべき事象であろう。しかし、著者はそのような静的な定義など無意味だといわんばかりに、物語のなかに時空を見つめるのだ。それが正しいかどうかは判らない。読者が判断するべきであろう。しかし、著者は好漢たる人物たちと戦後の日本システムのなかに、いまを生きる日本人が知っておくべき真実を見出すのだ。

 著者も指摘しているよう80年代半ば、イギリスの国際政治経済学者スーザン・ストレンジは『カジノ資本主義』のなかで、金融システムがその機能自体のなかにリスクを内在しているという「システミック・リスク」の問題を、市場と国家との力のバランスの問題としてとらえていた。そして、いま世界市場はブレグジットとトランプ旋風のなかで揺れ動いている。はたまた中国のバブル経済はシステミック・リスクを内包していないのだろうか。

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1955年、北海道生まれ。中央大学商学部卒。 株式会社アスキーなどを経てマイクロソフト株式会社に入社、36歳で同社代表取締役社長に就任。1991~2000年、同社代表取締役社長。 2000年、投資コンサルティング会社インスパイアを設立。2011年、書評サイト「HONZ」を開設。現在、インスパイア取締役ファウンダー、スルガ銀行社外取締役、早稲田大学ビジネススクール客員教授。著書に、『大人げない大人になれ! 』(新潮文庫)、『面白い本』(岩波新書)、『成毛眞の本当は教えたくない意外な成長企業100』(朝日新聞出版) 、『ビジネスマンへの歌舞伎案内』(NHK出版新書)などがある。


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