鉄鋼業界トップの新日本製鐵と第3位の住友金属工業が、合併の検討に入った。合併のめどは2012年10月。世の中は歓迎ムードだが、この大型合併はそう楽観視してよいのだろうか。「規模」と「独禁政策」をキーワードにその意味を問う。(取材・文/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)

2月3日に開かれた記者会見を前に、握手を交わす新日本製鐵の宗岡正二社長(左)と住友金属工業の友野宏社長(右)
PHOTO:REUTER/AFLO

 日本鉄鋼業界トップの新日本製鐵と第3位の住友金属工業が、合併の検討に入ると発表した。合併のめどは2012年10月。合併が実現すれば、アルセロール・ミタル(ルクセンブルグ)に次ぐ、世界第2位の鉄鋼会社が誕生することになる。

 これによってグローバル市場で戦える鉄鋼メーカーが誕生すると、政財界、マスコミとも歓迎ムードが強いが、果たしてそう楽観できるのか。両社は02年から相互に株式を持ち合うなど親密な関係にあり、その組み合わせに意外性はない。そこで、この超大型合併の意味を、二つのキーワードで考えてみたい。

再び「規模」が脚光を浴びる

 一つ目のキーワードが「規模」である。この10年で鉄鋼業を巡る経営環境、競争関係は様変わりとなった。2001年の全世界の粗鋼生産量は約8.5億トンで、このうち中国が約1.3億トン、日本と米国がほぼ1億トン、EUが1.9億トンと、日米欧中の間に大きな差はなかった。

 それがリーマンショック翌年の09年には、世界の粗鋼生産量12.2億トンのうち、中国が実に5.7億トン、EUが1.4億トン、米国が6400万トン、日本が8700万トン、インドが6300万トンと、不況の影響を強く受けた先進国をしり目に、鉄鋼生産・消費の主戦場は、新興国に移ったことが、より明確になった。

 メーカー別でも、同様に大きな変化が起こっている。粗鋼生産量で見ると、01年は1位アルセロール、2位ポスコ(韓国)、3位新日鉄、4位インパット・インダストメント(英国)、5位上海宝鋼集団の順で、トップ10には風雲児ミタルの姿はなく、中国メーカーで入っているのは、上海宝鋼の1社だけ。これに対して、日本は日本鋼管が9位、川崎製鉄が10位に入っており、この2社は02年に経営統合してJFEスチールとなった。