2社合計で自販機台数は12万台に。上位陣は20万~50万台抱えており、その差は大きい

 サッポロホールディングスがポッカコーポレーションを買収する。

 2社合計しても清涼飲料のシェアは3%、業界8位ということで、一般には「弱者連合」という陰口が多い。その一方で業界内には「伸びしろ」の大きさを指摘する声もある。

 伸びしろの根拠は二つ。第1は経営の重石となっていた株主関連の懸念事項が一掃されたことだ。

 サッポロは2004年以来、筆頭株主の外資系ファンドのスティール・パートナーズに経営を揺さぶられ続けたが、同ファンドは昨年末に完全撤退。一方のポッカも05年の上場廃止以降は投資会社と数社の食品会社が株主となり、近年は出口戦略、つまり再上場するのか否かなど株式の行方が不安視されていた。

 今後は経営の自由度が増すこと、またサッポログループの飲料事業を拡大させるという、経営の方向性が一致することはプラスに働く可能性が高い。

 第2は、サッポロの飲料会社であるサッポロ飲料の、ここ数年の経営改革の実績だ。

 サッポロ飲料は05年12月期から3期連続で赤字だった。同時期に売上高は26%減少、5万台とサントリーの1割程度しかなかった自動販売機数も3万台へと減少した。08年スティールは飲料事業の売却を迫ったが、その提案に関しては他の多くの株主も賛意の声を上げたほどだ。

 改革は08年に穀物メジャーのカーギルジャパンのトップだった鈴木英世氏がサッポロ飲料の社長に就任して実現した。鈴木氏は1997年に倒産した大手食品卸の東食の管財人兼社長に就任し、短期間で再建を果たしたことでも知られる敏腕経営者。鈴木氏は無意味な新商品投入や不採算取引からの撤退を敢行し、社長に就任した初年度に黒字化を達成した。

 不毛な新商品投入競争や不採算取引の横行は飲料業界全体が抱える課題だ。大手各社も改善を試みながら、なかなか実現できないのが実情だが、「そうした経営改革を実行できたサッポロは自信を深めたのではないか」(ライバル会社)。

 確かに、サッポロ飲料は主力商品の「リボンシトロン」でさえ知名度はイマイチ。「サッポログループの社員は外出先で自社のジュースを飲もうと思っても、自販機は見当たらないし、コンビニエンスストアにも置いていないことが多く、昨年の猛暑では苦労した」といった自虐的な笑い話が社内で聞こえるように、販路も限られている。だが、こうしたハンディを克服し、着実な成果を上げている。

 統合すれば一気に12万台へと増加する自販機網や、シンガポールなど東南アジアで高い知名度を誇るポッカのブランドと販路をどのように活用するのか。シェア上位陣とは異なる経営戦略、差別化が生き残りのカギとなる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木 豪)

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