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三流の維新 一流の江戸
【第12回】 2016年12月31日
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原田 伊織

「明治の父」小栗上野介が
現代に残した「革命的○○」とは?

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「官軍教育」のポイント

 では、オリジナリティのある社会システムを有していた江戸政権を倒し、それを全否定した明治新政権とは、実際のところどうやって成立したのか。

 このことについて、私たちは実に単純明快な歴史教育を受け、今もなおその教育内容は新政権が成立した約百五十年前に設定された路線から全く外れていない。

 今、それは「官軍教育」と呼ばれ、その歴史観は「薩長史観」とも呼ばれるが、言葉だけはようやく広まってきたものの、一世紀半にも亘って教え込まれたことは簡単には否定されないものである。

 では、「官軍教育」のポイントはどの点にあるか。
 まず、これを提示しておかなければならない。

 唯一最大といってもいいそのポイントは、「薩摩長州を中心とした下級武士たちの手による明治維新という革命的な封建的徳川体制の打倒によって、我が国は西欧列強による植民地化を防ぎ、近代国家建設の幕を開けた」ということであろう。

 このポイントのほぼすべてが史実からは全くかけ離れていることは、これまでの著作で述べてきた通りである。
 核になる部分について重複する部分もあるが、改めて整理しておきたい。

 私自身が、薩摩長州政権の書いた歴史、即ち官軍教育を叩き込まれて育った世代である。
 学校での教えだけにとどまらず、遊びやエンターテインメントの世界も官軍教育の精神で貫かれていた。

 映画『鞍馬天狗』シリーズなどは、その典型といえよう。
 長州藩士桂小五郎を代表とする勤皇の志士を助ける鞍馬天狗は、白馬に跨(またが)る正義の士であって、新撰組は悪逆非道な人殺し集団であった。

 幼い頃のチャンバラ遊びでは近藤勇役になる者がおらず、それを決めるのにいつも苦労したものである。
 この次に桂小五郎をやらせてあげるから、などといってガキ大将の特権で決めざるを得なかったものだ。

 では、今の若い世代はどうかといえば、そもそも我が国の歴史に興味をもつ者などほとんどいないのが実情ではあるが、彼らが受けている教育の面でみれば、これが全く変わっていないのだ。

 今現在、高校で使われている歴史教科書を読んでみたが(山川出版社、東京書籍、実教出版、明成社)、幕末維新史といわれる部分の軸になっている教えは、半世紀以上昔に習った私の世代のそれとほとんど変わっていなかった。

 つまり、老若男女を問わず私たち日本人は、この百五十年弱という長い間、官軍教育以外の歴史を教えられたことはないのである。

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