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三流の維新 一流の江戸
【第15回】 2017年1月6日
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原田 伊織

「幕末の三傑」への大いなる疑問

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小栗上野介忠順の知性と品格

 また、条約の批准手続きのための外交団の目付として井伊直弼に抜擢されて渡米した小栗上野介忠順の知性と品格に、『ヘラルド・トリビューン』をはじめとするアメリカの現地紙が驚嘆の記事を掲載して敬意を表したことは広く知られている逸話である。

 こういう幕府の高度に訓練されたテクノクラートの存在は、彼ら自身の素地は勿論無視することはできないが、幕府がそれなりに外交経験を積んできたことを示している。

 嘉永六年にペリー率いる黒船が来航して、その武力威圧に屈して幕府は遂に開国したというのが官軍教育に則(のっと)って今も学校で教える日本史である。

 ところが、実際には幕府は天保十三(1842)年に「薪水(しんすい)給与令」を発令し、文政八(1825)年から施行されてきた「異国船打払令」を完全否定し、この時点で対外政策を百八十度転換していた。

 即ち、この時点で実質的に開国したと看做(みな)すこともできるわけで、薩摩長州の事情で後に書かれた歴史とは二十年以上の開きがあるのだ。

 尤(もっと)も私は、江戸期日本が“鎖国”をしていたという薩長政権が書いた歴史記述そのものに異議があるが、これについては本書に譲りたい。

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