HOME

メタボリック

肝臓

腰痛・肩こり

高血圧・高脂欠症

うつ・ストレス

ニオイ

薄毛

老化防止

禁煙

男の病気

「引きこもり」するオトナたち

引きこもりの社会復帰を阻んでいるのは誰か
「エントリーシート」と「ハローワーク」の高い壁

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第56回】

外に出るきっかけを
天変地異に求めてしまうほどの孤独

 真っ暗な部屋の中で、テレビのブラウン管からは、「たったいま、飛行機が墜落した模様です」などと、キャスターの上ずった声の映像が流れてくる。

 2001年9月11日。アメリカ同時多発テロ事件の第一報を伝えるニュースだ。

 30代の高木明雄さん(仮名)は、当時、都内のアパートで1人暮らし。その日の夜10時過ぎ、何気なく報道番組を見ていて、突然、CNNのニュースが流れ始めたときのシーンを鮮明に覚えている。しかし、その前後の記憶が、なぜかない。

 テレビでは、当初の事故報道から、現地駐在ジャーナリストが「テロの情報が入った」と伝え、2機目がビルに衝突。そして、ビルの崩壊へと延々と続いていく。そんな映像を、高木さんはただ茫然と眺めていた。

 「自分の関係のないところで、歴史がつくられているなあ」

 時代が動いている傍らで、引きこもってテレビを見ている自分がいる。高木さんには当時、この大きな事件が、まるで映画のように感じられた。

 「あの頃は、自分からはどうにも動くことができなくて。自然災害などの外の要因をどこかで待っていました。アパートが火事になればいいのに…とか」

 天変地異があれば、外に出られるような気がしていた。

 「失われた10年」が続く中で、21世紀に入り、世の中がテロなどのぼんやりした社会不安へと向かっていく。そんな時代のどこかに展望を見いだせそうだった一方で、それらも自分につながる話には思えなかった。

 その頃の高木さんは、誰とも関わりを持っていなかったからだ。

「うつ」へと追い込んだ
多忙な日々と超就職氷河期

 高木さんが最初に体調を崩したのは、ちょうど9・11事件の起こった2001年、大学を卒業する直前頃のことだ。そんな状態のときに、超就職氷河期も重なり、就職活動が思うように行かなかったのがきっかけとなり、引きこもるようになったという。

 学生時代は大変だった。都内にある大学のゼミに入ると、いろいろな役目が自分に回されてきて、それらを「できます」といって、すべて引き受けていた。しかも、新たな役目が次々にできてしまう。

1 2 3 4 >>
このページの上へ

池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

⇒バックナンバー一覧