自分には向いていないと思う仕事も、やってみないとわからない──。アサヒビール元会長兼CEOの福地茂雄氏は、自らの経験からそう語る。最新著書『アサヒビールで教わった 自分の壁を一瞬で破る最強の言葉』から、自分の才能に気づくための「最強の言葉」をお届けする。

自分の能力ほど
自分ではわからないものはない

不本意と思う異動にこそ、チャンスは転がっている福地茂雄(ふくち・しげお)
アサヒビール元会長兼CEO 1934年福岡県生まれ。57年アサヒビール株式会社入社。99年代表取締役社長就任。2001年、48年ぶりに国内ビール系飲料で年間トップシェア獲得。02年代表取締役会長兼CEO。07年相談役就任後は東京芸術劇場館長、日本放送協会会長、新国立劇場理事長などを務める。15年相談役退任。

「自分の能力は、他人が一番知っている」──。

 私はつねにこの考えで自らのキャリアを積んできました。

 1957年、アサヒビールに入社した私は、入社研修で希望の勤務地と職務を聞かれ、それぞれ「九州」「工場の経理」と答えたのです。

 九州なら土地勘もあります。また、家業を昔から手伝っていたこともあり、高校から学んできた簿記が使えるので、経理を希望しました。

 ところが、ふたを開けてみると、私の職場は「大阪支店販売課」。

 勤務地も職務もどちらも第3志望の配属でした。

 土地勘のない大阪で、自分にはまったく不向きだと思っていた営業職で、職業人生がスタートしたのです。

 案の定、当初は、営業成績がふるいませんでした。

「会社の歯車にはなりたくない!」などと言うのは、サラリーマンのよくある愚痴の1つですが、私は会社の歯車にすらなれていなかったのです。

 会社は、自分の能力をきちんと見てくれているのだろうか……。