「電車で高齢者に席を譲る」という人が減っているワケ61%の人が席を譲ろうとして、相手に断られたことがあると回答している実態も

若い男性が「どうぞ」と席を譲ったその時……

 電車の中でお年寄りに席を譲る――。そんな当たり前の“常識”が、現在では通用しなくなってきている。席を譲らない人が増えてきているのだ。どうしてだろうか?

 先日、筆者が電車に乗っていると、ある駅で高齢の男性が乗り込んできた。車内は混雑とまでいかないものの、吊り革につかまって立っている乗客がちらほら、といった感じだった。高齢の男性を見るや否や、若い男性が席を立ち、「どうぞ」と席を譲った。車内には、ちょっとした緊張が走った。高齢の男性は見るからに気むずかしく、席を譲られたことに対してプライドが傷つくのではないかと思われたからだ。

 高齢の男性は、「次の駅で降りますので」と若い男性の申し出を断った。車内には、どことなく気まずい空気が漂う。誰のせいでもない。なのに、なぜ我々はこんな気持ちを味わわなければならないのだろうか。現代における“理不尽”の一つである。

 この場合は、当人たちや周囲が気まずい思いをするだけですんだが、電車の席を巡っては、時にトラブルに発展するケースもある(当然、席を譲らなかったことによってトラブルになることも)。「お年寄りを敬うべきだ」という常識の聞こえはいいが、実際には「お年寄り」の線引きは難しく、またお年寄り自身の主観によっても違ってくるため、敬う側が心理的な負担を強いられてしまう事態になるのである。

「席を譲るべき」派が2割近くも減少

 乗り換え案内サービス「駅すぱあと」を提供するヴァル研究所が2016年11月に発表した調査結果によると、「お年寄りなど優先すべき人がいた場合は、優先席では席を譲るべき」と考えている人は75.9%で、2013年に行われた同様の調査と比較すると、約17%も減少していることがわかっている。わずか3年で激減した形だ。