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ニッポン 食の遺餐探訪

「ソーセージの父」が遺した本当の手作りの味を復刻

樋口直哉 [小説家・料理人]
【第51回・最終回】 2017年2月8日
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 東京駅から電車に揺られること一時間半弱、千葉県山武郡横芝光町を訪れた。北は成田空港、南は九十九里浜という横芝光町は都心に近い田舎だ。横芝駅を降りると、冬の空が広がっている。横芝光町は九十九里平野に位置し、あたりに高い建物もないからだ

 どのような食べ物にも歴史があり、人の物語がある。ここ横芝光町は日本のハム・ソーセージの父と呼ばれる大木市蔵の生誕地だ。

 大木は明治28年、千葉県匝瑳郡東陽村(現・横芝光町)に生まれた。横浜で職人としての修行をはじめ、ドイツ人ソーセージ職人マーテン・ヘルツからソーセージの製法を習う。大正6年、第1回神奈川県畜産共進会に日本ではじめてソーセージを出品し、その3年後に独立。横浜や銀座でハム・ソーセージ店を営みながら、東京帝国大学や東京農業大学で講師を務める他、全国の農村を訪ね、ソーセージの技術を伝えた。

フードショップいちはらは地元密着スーパー。この加工部が大木式ハム・ソーセージを製造を担当している

 戦後は地元、千葉にも大木ハム千葉工場を設立した。事業としての利益よりも人材の育成に重点を置き、さながら食肉学校のような会社だった、という証言もある。しかし、現在では工場もなくなり、町内でも大木を知る人が少なくなりつつあった。

 「郷土の偉人が埋もれてしまうのでは?」

 そんな危機感を持った横芝光町商工会青年部のメンバーは『大木式ハム・ソーセージ』を復刻した。100年の歴史の味がするソーセージはどのように復活したのか。製造を担当している「フードショップいちはら」で、メンバーから開発の経緯を伺った。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


ニッポン 食の遺餐探訪

和食を世界遺産に、という動きが農林水産省を中心にはじまっている。日本料理はここ十年余りの世界的な流行になり、外国の料理人の多くも関心を持っていて、誰もがそれを理解しようとしている。しかし、当の日本人の多くは日本料理を理解できていないのではないか。そこでこの連載では、日本の食を支えている道具や食材をつくっている生産者、職人を訪れて、私たち日本人が知らない日本の“食の遺餐”を紹介していく。 

「ニッポン 食の遺餐探訪」

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