供給不足必至の仮設住宅<br />求められる支援制度の見直し被災地での仮設住宅の建設がスタートしたが、すべての被災者を支援するには足りない
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 東日本大震災の被災者向け仮設住宅の第1弾として、およそ3万2800戸が発注された。3月26日までに、被害の激しかった岩手県、宮城県、福島県で、合計2645戸の仮設住宅が着工している。

 避難生活を送る被災者は3月29日現在で、合計17万7456人に及ぶ。多くの被災地では、被害の実態はまだ正確に把握されておらず、必要とされる仮設住宅は、3万2800戸を大きく上回る可能性が高い。

 だが現在、東北や北関東などに集中している建材や住宅設備のメーカーは被災し、生産が止まっており、第1弾の予定戸数ですら、供給が危ぶまれている。

 また、被災した市町村で、多くの自治体が機能停止に陥っている問題もある。

 通常、被災者への住宅支援は基本的に被災した自治体経由で行われる。仮設住宅を建設する場合の補助は、市町村レベルで必要戸数を確認し、それを都道府県経由で国に申請する。被災者は、被災自治体が用意した無料住宅に住む、というかたちがセオリーだ。

 ところが、今回は震災で自治体自身が壊滅的被害を受けた。この方法だけでは限界がある。

 供給能力と自治体機能の低下で、「被災地に仮設住宅を建てる」という従来型の対策が取れない可能性が高まっているのだ。

 不足する仮設住宅の代替手段となりうるのが、全国で400万戸を超えるといわれる賃貸住宅の空き室だ。

 今回の震災では、他県に集団避難を行っている被災者も多い。こうした被災者に対して、全国の自治体が県営住宅を提供したり、賃貸事業者が賃貸物件を無償提供したりするなど、支援の輪が広がりつつある。

 だが、制度上は、こうした自治体や民間事業者の支援を、国費でサポートすることができない。被災して災害救助法が適用された自治体から請求するというかたちでしか補助を受けられないからだ。

「当面は持ち出しを前提にして被災者を支援している自治体が多いはずだ。こうした支援自治体を補助する仕組みや、自治体経由でなく、個人が直接国からの支援を受けられるような仕組みもつくるべきだ」と中村哲治参議院議員は主張する。

 現に、すぐに仮設住宅の代わりに利用できる物件情報を収集し、データを整備しているものの「支援自治体がどのように物件を借り上げ、家賃補助を行うのかの仕組みが国にないため、動けない」と嘆く住宅関連業界団体もある。

 避難所生活を強いられる被災者に、一日でも早く快適な住環境を用意しなくてはならない。早期の物資調達と仮設住宅の建設が不可能でも、制度変更ならすぐに対応できるはずだ。

 被災者のために前例にこだわらず制度運用を行うことが、早急に国に求められているのではないか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

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