北九州市産業経済局
企業立地支援部
企業立地支援課
井上美紀 課長

BCP(事業継続計画)の観点から、北九州市に進出する企業が目立っている。中でもコンタクトセンターなど顧客対応業務を行うサービス拠点の開設が相次ぎ、雇用を生み出している。それをサポートするのが同市の企業立地支援課、女性の活躍が光る部署だ。

 なぜ北九州市ではコンタクトセンターの開設が増えているのか。「実は、北九州市の“言葉”に優位性があります」と打ち明けるのは、企業立地支援課の井上美紀課長だ。「北九州は官営八幡製鐵所の開設以来工業都市として発展、全国から人が集まってきた土地柄で、土着の方言が強くなく、アクセントは標準語に近い。そのため顧客への対応業務を専門に行うコンタクトセンターの業務に向いているのです」(井上課長)。

女性たちのポテンシャルが
生かせる都市

 もともとコールセンターと呼ばれていた業務は、最近では文書作成・管理やデータ入力・処理などの事務管理業務が付加され、コンタクトセンターと呼ばれている。企業のバックオフィス業務を請け負う形でアウトソーシングされ、災害発生時などに重要業務が中断しないよう、その多くは本社機能から離れ、地方分散化が図られている。

 今、北九州市では製造業だけでなく、時代の趨勢(すうせい)に合わせてサービス産業の企業誘致にも力を入れている。多くの雇用を生み出すコンタクトセンターの誘致は、特に注力している分野であり、市ではコンタクトセンター向けの人材発掘や採用支援を行っている。

 「有効求人倍率が改善している中で、レベルの高い人材を提供し続けるため、顧客サポート人材育成研修事業なども行っています。市内の事業者に委託して、パソコン・IT機器や通信のテクニカルサポート、BPOの事務処理などについて、基礎から現場での実践的な対応力までを養ってもらいます」と井上課長。

 求職者にとっては能力を身に付けて就職しやすくなり、企業にとっては“即戦力”が獲得できる。Win‐Win関係が築かれ、雇用は順調に拡大する。
現在市内には15社を超えるコンタクトセンターが立地し、雇用は4000人超に及ぶ。求職者の多くは、育児が一段落して事務系の職種を求める女性たちだ。

"コンタクトセンタービル建設プロジェクト"が進行中のJR黒崎駅前

 企業立地支援課では、この他に市内の高校生や専門学校生のコンタクトセンター職場見学・体験事業などを実施し、雇用の範囲を拡大する支援も行っている。またJR黒崎駅前では、まとまった広さの物件を提供するため、“コンタクトセンタービル建設プロジェクト”が進行中。「誘致エリアには、オフィスビルの供給とともに、託児所や医療機関など、働く人のニーズを考えた社会サービスの提供も検討している」(井上課長)という。

 ちなみに北九州市では「女性活躍推進アクションプラン」を策定し、市役所内における女性職員の活躍を促している。井上課長もその中の一人だ。市の審議会などの女性委員参画率は40%を超えて政令指定都市では第1位。女性たちのポテンシャルが生かされる都市でもあるのだ。

※ビジネスプロセスアウトソーシングの略

 

働く女性と雇用する企業
共に満足できる支援を

北九州市
産業経済局
企業立地支援部
企業立地支援課
倉本潤子主任

企業立地支援課の倉本潤子さんが担当するのは、主にコンタクトセンターの人材発掘、採用支援業務だ。「コンタクトセンターの業務は、クレーム対応など精神的にきついイメージがありますが、今はフォロー体制があり1人で責任を負うことはありません。また業務内容も多様化しており、働く人のニーズに合わせて時間や働き方が選べます。福利厚生の面でも充実しており、長年働くことやキャリアアップも可能。企業立地支援課では現場で活躍する女性たちを紹介する情報誌も発行しており、雇用のミスマッチをなくして、働く女性と雇用する企業に共に満足してもらえるよう、支援に力を入れています」。