「そしてアメリカはこの間に、個人金融資産を飛躍的に拡大させていくんです。今やそれは、4000兆円規模にもなる。当時から日本は、アメリカに次ぐ個人金融資産を誇っていたわけですが、その差は圧倒的なものになってしまった。国の借金を差し引いた上での金融資産の伸びでも、圧倒的な差がついてしまったんです」
重要なことは、このアメリカの個人金融資産の四割以上が、株式・出資金・投資信託といった直接金融の市場に向かうことである。
そしてアメリカの株式市場の活力もまた、日本を大きく引き離していく。バブル期には、日本と同レベルにあったニューヨーク証券取引所の売買代金は、今や日本の六倍ものスケールになってしまった。
「たしかに、ワールドコムやエンロンのような金融不祥事もありました。リーマンショックもありました。問題もたくさん噴出しました。解決をしなければならない問題もある。ただ、あれほどの大問題が起きても、アメリカの株式市場の活力は変わっていません。一時は7500ドルまで暴落したダウ平均は、あっという間に1万ドル近くに達し、超えた。これが活力であり、アメリカの民意なんです」
それに対して日本はどうだったか。
「アメリカが完璧だ、とにかくすばらしいことだらけだ、と言うつもりはありません。しかし、お金が動いている。流動性が高いんです。それは、直接金融に大きくシフトしたからです。約4000兆円の個人金融資産のうち、四割の約1600兆円が株式や投資信託で運用され、ダイナミックに株式市場で民意を発揮している。日本はといえば、個人金融資産1400兆円といっても直接金融には100兆円ほどしか入っていない。残りの1300兆円は、眠っているどころか、一部は国の借金に流れている状況だということです」
違いは、お金が自然な流れで動いているか、ということだ。
「国の経済規模を考えたとき、1600兆円が動いている国と、100兆円しか動いていない国と、どちらが強いでしょうか。どちらがダイナミックな経済を展開できるでしょうか。世界は激しい競争をしています。日本は、この時点ですでにかなりのハンディ戦になっている、ということです」