アメリカでの電子書籍の盛り上がりは日本のかなり先を行って、昨年は総書籍売り上げの8.32%が電子書籍によるものだった。カフェや航空機の機内で電子書籍リーダーを手に読書をしている人びとの姿も珍しくなくなった。

 その電子書籍の新たな戦争がじつは今、アメリカの公立図書館を舞台に繰り広げられている。

 町の図書館というとこの時代、倹約好きな人が本を借りに行く場所、あるいは暇つぶしや憩いの場所だと思われがちだが、少なくともここアメリカではその認識を改める必要がありそうだ。図書館は、電子書籍時代になって新しい姿に変わろうとしているのだ。

 米国で最初に電子書籍を導入したのはオハイオ州クリーブランドの公立図書館で、2003年のことだった。現在、全米の66%の公立図書館がすでに電子書籍を貸し出しているといわれる。たとえば、ニューヨーク公立図書館では、3万3000タイトルもの書籍が電子版で借りれるようになっている。

 電子書籍貸し出しに対する出版社のスタンスは、大きく二つに分かれている。自社の知名度・ブランド力のアップや間接的な売上げ増につながると考える推進派と、多数の人びとに貸し出されてしまうと本が売れなくなると危惧する反対派だ。そこに電子書籍リーダー開発企業の思惑も絡み、事態は複雑怪奇な様相を呈している。図書館は今や、さまざまな企業の思惑や利害が衝突するビジネスモデルの実験場になったといっても過言ではないだろう。

 さて、図書館で電子書籍を借りるには一定の決まりがある。まずは、その地域に住んでいる住人であること。そして図書カードを持っていることだ。