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「週刊文春」編集長の仕事術
【第5回】 2017年3月15日
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新谷学

雑誌ジャーナリズム大賞「ベッキー禁断愛」報道はこうして生まれた

つねに世間を賑わせている「週刊文春」。その現役編集長が初めて本を著し、早くも増刷が決まるなど話題となっている。『「週刊文春」編集長の仕事術』(新谷学/ダイヤモンド社)だ。
3月13日、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」が発表され、大賞は「週刊文春」の「ベッキー31歳禁断愛 お相手は紅白初出場歌手!」に決まった。今回は、この記事が生まれた経緯と、それを可能にした週刊文春のチームプレーの秘密に迫る。(編集:竹村俊介、写真:加瀬健太郎)

「攻める」チームこそがスクープを可能にする

 「週刊文春がスクープを獲ることができるのはなぜですか?」。2016年以降、あらゆる場面で聞かれてきた質問だ。答えは至ってシンプル。それは「スクープを狙っているから」である。「スクープを獲るのが俺たちの仕事だ」と現場の記者はみんな思っている。一人ひとりの記者は、常にネタに対してアンテナを高く張っているし、カカトは浮いている。だから、最初の一歩で出遅れない。

新谷学(しんたに・まなぶ)
1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業。89年に文藝春秋に入社し、「Number」「マルコポーロ」編集部、「週刊文春」記者・デスク、月刊「文藝春秋」編集部、ノンフィクション局第一部長などを経て、2012年より「週刊文春」編集長。

 ベッキーさんの記事も、高いアンテナと迅速な動きが生み出したものだ。情報の端緒をある記者がつかんだのは2015年秋頃のこと。その記者は、正月休みの間も取材を続け、核心部分にたどりついていた。

 「初荷スクープになりそうです!」

 デスクから私に、そんなメールが届いたのは2016年1月2日の夜。私とデスクはその日のうちに取材班の人選を行なった。特集班からは男女各1名。グラビア班からは記者2名とカメラマン2名。芸能ネタが得意で、何より人に強い記者を最優先に選んだ。取材相手へのあたりが柔らかく人間的に魅力がある。そのうえ粘り強い記者だ。

 私が3ヵ月の休養から現場復帰するのが翌3日のこと。その時点で確証となる情報は取れていた。ただし、新年最初の号に出すとなると時間がない。4日までにゲス川谷さんの実家がある長崎に行って写真を撮って直撃し、その日のうちに記事を作成して、5日に校了、7日に発売という強行スケジュールだ。

ゲス川谷さん行きつけのちゃんぽん屋を割り出し……

 あのスクープでは、長崎の現場に入った女性記者の事前の準備が功を奏した。

 川谷さん行きつけのちゃんぽん屋さんを割り出し、実際、その店で一度は見失った川谷さんの車を発見している。教師である川谷さんの父が息子の自慢をしていることもつかんでいた。それが「川谷さんがベッキーさんを実家に連れて行くのではないか」と判断する材料になった。二人を直撃したのもその女性記者だ。

 ベッキーさんに「事務所を通してください」と言われると、すぐに呆然と立っていた川谷さんに取材対象を切り替えた。これも事前に川谷さんはまだ芸能界のルールに慣れていないとの情報を得ていたからだ。入念な準備と現場でのとっさの機転、反射神経。大切なのは、「いける」と思ったときに躊躇せずに勝負をかけることだ。

 編集長の立場からすると、「このネタは大きくなる」と直感したときに、間髪容れずに記者を次々に投入できるかが、分かれ目だ。我々週刊誌は「攻めのメディア」で、踏み込むべきときには踏み込まなければならない。それができるかどうかである。そして、それに瞬時に応えてくれる「最強の組織」を日頃から作り上げておく必要があるのだ。

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    新谷学

    1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業。89年に文藝春秋に入社し、「Number」「マルコポーロ」編集部、「週刊文春」記者・デスク、月刊「文藝春秋」編集部、ノンフィクション局第一部長などを経て、2012年より「週刊文春」編集長。

     


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