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「敵か味方か――アメリカがパキスタンに迫る
決断の意味とビンラディン後の報復テロリスク」
オバマ政権の中東問題アドバイザーに聞く

【第56回】 2011年5月5日
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2001年9月11日の同時多発テロを首謀したとされる国際テロ組織アルカイダの最高指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者がパキスタンの首都イスラマバード郊外で米軍の奇襲攻撃によって殺害されたことを受けて、世界各地で報復テロの懸念が広がっている。オバマ政権はなぜ拘束ではなく殺害を選んだのか。アルカイダそして他のテロ組織による報復テロに対する備えは万全なのか。互いに面子をつぶされたパキスタンとアメリカの関係はどこに向かうのか。かつて国務省やホワイトハウスの外交スペシャリストを務め、現在もホワイトハウスの非公式顧問として助言をする立場にあるカーネギー国際平和財団のミッシェル・ダン上級研究員に話を聞いた。
(聞き手/ジャーナリスト、瀧口範子)

――米海軍特殊部隊がアルカイダの最高指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者を殺害した。これは、アメリカの対テロ戦争にとって何を意味するのか。

ホワイトハウスのシチュエーションルーム(緊急対応室)で、スクリーンに映し出されたビンラディン容疑者殺害作戦の状況をリアルタイムで見つめるオバマ大統領、バイデン副大統領、クリントン国務長官、ゲーツ国防長官ほか米政府要人。Photo: AP/AFLO

 ひとつ確かなのは、2001年9月11日から続いているテロとの戦いにおいて、ひとつの章が終わった“区切り”ではあることだ。また、テロリストたちに、アメリカが執念深く、どんなに時間がかかっても目的を達成することを知らしめた点では、意味は大きい。

 だが、これで対テロ戦争そのものの終焉が訪れたかというと、そうではない。まだそこからはほど遠い状態だ。確かにビンラディンはイスラム過激派やテロリストたちを鼓舞させる存在だったが、彼らを束ねる直接的な司令塔だったわけではない。

ミッシェル・ダン(Michele Dunne) ワシントンのカーネギー国際平和財団の上級研究者で、同財団が発行する『Arab Reform Bulletin』の編集長。 米国務省やホワイトハウスで中東スペシャリストとして活躍。国家安全保障会議、国務省のスタッフとして政策立案に従事したほか、エジプトやイスラエルの在米大使館での勤務経験もある。ジョージタウン大学で博士号取得。現在同大学で教鞭もとる。

 また、アルカイダと連携しつつ、しかしアルカイダに従属せず自律的に活動をしているテロ組織は北アフリカあるいはイランなど中東にはたくさんあり、依然として危険な状態だ。今回のビンラディン殺害によって、短期的に見れば彼らはテロ活動への努力をかえって倍増させるだろう。したがって、今回のことだけによって対テロ戦争が終焉に向けて大きく動いたと見るのは間違いだ。

――アメリカ政府は、そうしたテロ組織の脅威や実態を過小評価することなく把握していると思うか。

 全力を挙げて把握に努めている。これは確かだ。ことにイエメンはアラブ半島のテロ活動の中心地であり、かなり危険な組織がある。彼らは、アメリカや在外アメリカ人に対する攻撃を宣言しており、実現していれば大きな被害が出た可能性のあるテロ行為をいくつも計画していたことが分かっている。また、アルカイダの残党もパキスタンやアフガニスタンにおり、安心はできない。

――アルカイダ自体は、ビンラディン容疑者の死によって、どの程度弱体化が進むと見ているか。

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