ただでさえ電力不足が懸念されているこの夏だが、気象庁が4月25日、3ヵ月予報を発表したところ、なんと今夏の気温は高めになる見込みだという。記録的猛暑となった昨年に続いて、思わず気が滅入りそうだが、非情な天を恨んでみても仕方ない。ここはひとつ、頭を使って猛暑の夏をやり過ごすしかないだろう。
そんな今、首都圏では早くも夏物商戦が本格化しているという。エアコンの利用を控え、出費を抑えて賢く過ごす――。そんな消費者の姿が浮き彫りになってくる。
そして、今という時代を映し出すように、その消費を特徴づけるものとして、「扇風機」や「土鍋」「魔法瓶」といったレトロな“昭和的グッズ”が注目されているというのだ。日経新聞をはじめ、最近各メディアで報じられている。
まず扇風機だが、家電量販店などでは活発な動きが見られるという。ヨドバシカメラマルチメディア横浜店(横浜市)では、扇風機売り場を通常より1ヵ月早く開設し、120種類以上のラインナップを揃えている。すでに1日に100台以上と、例年の約10倍の売れ行きとなっており、早くも多くの消費者が暑さ対策に乗り出しているのがわかる。
続いて土鍋は、電気釜よりも節電ができ、おまけにご飯がより美味しく炊けると好評だ。高島屋横浜店(横浜市)では、昨年の2倍のペースで売れているという。
「魔法瓶は持ち運びに便利で空だきの心配もない」と、象印マホービン(大阪市)では今年3月の出荷数が前年比3割増であった。
特にこの夏は、エアコンの代替需要が高まることは必至で、涼感効果のある下着や寝具、ポロシャツやTシャツなどのクールビズアイテム、保冷シートやスプレーなどにも関心が集まるだろう。さらには、すだれやうちわ、蚊取り線香など、懐かしい昭和的グッズも注目されるに違いない。
先の震災は、この国に多くの悲しみや苦しみをもたらした。それと同時に、日本人のメンタリティも大きく変わり、日本中が、いや世界中が劇的に変革する転換点になったことは言うまでもない。
筆者はそこに“原点回帰”の流れを強く感じるが、虚飾を廃し、ものの本質を再評価しようとする動きは、ある意味良いことだと言えるのではなかろうか。
(田島 薫)