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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

なぜ菅首相は「唐突」な決断をし批判されるのか
――政治の意思決定プロセスを日英比較から考える

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第9回】 2011年5月11日
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 菅直人首相が中部電力に対し、浜岡原子力発電所の全面的な運転停止を要請した。だが、菅首相の決断は停止要請決定から発表に至るまでの手続き面に不備があり「唐突」であると批判されている。

 これまでも「消費税10%発言」や「TPPへの参加表明」など、菅首相の「唐突」な決断は厳しい評価を受けてきた。しかし、例えば英国では政治指導者の「唐突」な決断は珍しくなく、国民もそれを問題視しない。なぜ日本では、菅首相の「唐突」な決断が批判されるのだろうか。

菅首相は
英国流意思決定を意識している

 英国政治の特徴は「密室」での意思決定だ。首相など政治指導者の決断が発表されるまで、基本的にすべて非公開である。業界の要望や学者の意見を聴取する「審議会」はない。各省庁間や政治家間の調整はあるのだろうが、一切外部からわからない。

 また、首相が増税を発表して、議会での審議なしに即日施行されるという、日本では信じられないこともある。要するに英国政治では、指導者が「密室」で立案した政策を、議会の審議なしに実行できる強力な権限を持っている。そして、指導者と国民の間の「信頼関係」が、その権限に正当性を与えている(第5回を参照のこと)。

 菅首相はかつて著書で「民主主義というのは『交代可能な独裁』だと考えている。選挙によって、ある人物なり、ある党に委ねた以上、原則としてその任期一杯は、その人物なり党の判断に任せるべきである。間違っていたら、次の選挙で交代させればいい」(菅直人『大臣』岩波新書)と論じた。これは、英国流意思決定の考え方そのものだ。菅首相は「英国政治マニア」である。彼の「唐突」な意思決定スタイルは、英国流を意識した彼なりの考え方に基づいたものといえる。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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