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「生き残る判断 生き残れない行動」の著者
アマンダ・リプリーに聞く
大災害生存者の心の闇と生と死の分岐点

【第58回】 2011年5月16日
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日本人の被災者は世界でも稀に見る忍耐強さを示した――。災害の際、生死を分ける最大の要因は運――。同時多発テロ、ハリケーン・カトリーナ、スマトラ沖地震など歴史的な大惨事や大災害の生存者たちを取材してきたジャーナリスト、アマンダ・リプリー氏は、そうした予断を持つことで、誤った被災者対策や個々人レベルの災害対策の思考停止を招きかねないと警鐘を鳴らす。では、被災者の置かれた精神状態に関する正しい理解はどうあるべきなのか。また、生死は運次第と諦めるのではないとしたら、いったいどうすればよいのか。生存者の証言から災害時の対処法の提言まで盛り込んだ全米ベストセラー「THE UNTHINKABLE」(邦題『生き残る判断 生き残れない行動』(光文社刊)の著者に聞く。(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)

――東日本大震災の被災者の忍耐強さと秩序立った様子には世界から驚きと称賛の声が集まったが、あなた自身はどう分析していたか。

アマンダ・リプリー (Amanda Ripley)
同時多発テロやハリケーン・カトリーナ、ポトマック川旅客機墜落、スマトラ沖地震などの大惨事・大災害の生存者の証言、そして心理学や生理学などの関連研究データを駆使した災害への事前準備や対処法などに関する提言まで盛り込み、専門家から高い評価を受けた「The Unthinkable」(邦題「生き残る判断 生き残れない行動」光文社刊)の著者。長年にわたり「タイム」誌に寄稿。次著は教育問題。

 実際に現地でこの目で確認したわけではないので、あくまで外から見た印象だが、私の分析は少し違う。確かに、被災後の反応の仕方は細かく見れば、文化圏ごとに多少の違いはあるのだろうが、忠実で受け身という精神状態は、じつは世界共通の災害生存者の反応であり、脳のメカニズムがそうさせていることが分かっている。つまり、日本人固有の性格に帰する分析は必ずしも正しくない。

――しかし、日本では、大災害時につきものの略奪事件などの不法行為は横行しなかった。

 おそらくパニックが起きなかったといいたいのだろうが、ヒステリーを起こさず、じっと黙っているのは、じつは大災害に直面した人びとの普通の反応だ。

 たとえば、2010年のハイチ地震の際には略奪事件が相次いだとさかんに報じられたが、これもよく調べてみると、報道されているほどには起こっておらず、略奪事件といっても、水や食糧がなくなり、それがために略奪に及んだケースがほとんどだった。

 そもそも、日本人は自分たちについて「ストイック」というレッテルを貼ることは避けるべきだ。特に今回のような大災害では、長期的に見て、ストイックであり続けるよりも、自分の気持ちを表に出す方が望ましい。

――それはなぜか。

 被災者が建設的な方法で感情を表現する機会を奪わないためだ。そうでなくとも、被災者は並はずれた忍耐を強いられている。通常、人間には立ち直る力があり、トラウマからも回復できるはずなのだが、今回は地震と津波だけでなく原発事故まで起こり、余震も続き、「回復期」が与えられないまま、不安と恐怖が長引いている。

 アメリカでも、ハリケーン・カトリーナで町全体が洪水にのみ込まれて消え去り、家に戻れない被災者が多数発生したが、彼らを苦しめたのは、著しい災害よりもむしろ不安の長期化だった。そのようなときに、さらなる我慢を強いるようなことはあってはならない。

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