急激なインフレの進行とともに、個人投資家の間では、通貨のように価値が目減りしにくい不動産への注目度が高まっている。不動産投資は、土地の値上がりなどによるキャピタルゲインが期待できるだけでなく、賃貸に出せば定期的なインカムゲイン(賃料収入)が得られるのも魅力だ。
ただし、それは入居者が確保できていればこそ。需要よりも部屋の数が多ければ、空室リスクが高まり、見込んでいた賃料が入らなくなってしまう。人口減少が急速に進む地方では、その危険が極めて大きい。
一方で、都市部の実情は異なる。「人口減少が進む中でも、首都圏をはじめとする都市部では人口流入が続き、賃貸の需要は拡大しています。しかし、受け皿となる賃貸物件は急に増やせるものではないので、借りたい物件がなかなか見つからないという問題が生じています」と語るのは、東京大学の柳川範之教授である。
柳川教授がセンター長を務める東京大学不動産イノベーション研究センターは、不動産データを蓄積して分析基盤を構築。都市力向上や不動産情報の評価・分析方策の在り方などを研究するプロジェクトを進めている。
その立場から、柳川教授は「借り手のニーズと賃貸物件のマッチングも、AIなどの最新テクノロジーによって最適化できる方法はあるはずです。賃貸ニーズは個別性が高く、仲介事業者のあっせんという伝統的な手法が完全になくなることはありませんが、膨大なデータ分析に基づくAIのレコメンデーションが、借り手の満足や賃貸物件の価値を高める時代がやって来るのではないでしょうか」と語る。
東京大学大学院経済学研究科 教授
柳川範之氏
住まいのDXがもたらす「快適」と「安心」
AIやDXというと、ビジネスにおけるテクノロジートレンドだと思われがちだが、実は不動産の領域でも、その活用は急速に進んでいる。
2006年の創業以来、「テクノロジーで、住宅を変え、世界を変えていく。」というミッションを掲げ、AIやIoTなどを活用した不動産サービスを提供しているのがrobot homeだ。
同社は、デザイン性の高い木造土地付き1棟アパートを中心に、建築コストが低く、入居者に好まれやすい収益不動産を提供。引き渡し後の賃貸管理サービスまで行っており、管理戸数は約2万6000室に上る。
「東京・大阪・名古屋・福岡・仙台の五大都市を中心に販売し、1都3県だけで管理戸数は約1万室に上ります。いずれの物件もデザイン性が高い上に最寄り駅から徒歩10分圏内と便利な立地なので、入居率は98%を超えています」と、同社の古木大咲代表取締役CEOは説明する。
高い入居率を支えているのは、立地や物件のクオリティーばかりではない。創業当初から「不動産×テクノロジー」を追求してきたrobot homeは、ネットワーク技術やIoTなどを駆使した物件づくりに取り組んでいる。
最近では、スマートフォンを使って遠隔地から室内の冷暖房や照明を操作したり、来訪者に対応できたりするテクノロジーはかなり普及している。
「もちろん、そうした機能は当社の物件も早くから完備していますが、われわれが特にこだわっているのは、入居する方だけでなく、周囲の人々や社会、そして何より不動産オーナーにも価値をもたらすテクノロジーを盛り込むことです」と古木CEOは語る。
robot home代表取締役CEO
古木大咲氏
その一例が、遠隔解除できるスマートオートロックだ。入居者が不在でも「置き配」が可能になり、再配達削減という物流課題の解決にも貢献できる。
さらに同社が重視するのは、テクノロジーによる「信頼」の構築だ。例えば、共用部に設置したAIカメラは、ゴミの散乱などを検知すると即座に管理会社へ通知し、スタッフが対応する仕組みになっている。
「人が24時間張り付かなくても、AIが物件を見守り続けられます。細やかな管理で物件をきれいに保つことが、オーナーさまと入居者さま双方の『信頼』につながるのです」(古木CEO)
robot homeの入居者は、20代の単身者が多いが、この世代はESG意識も高い。生活の利便性だけでなく、社会貢献や管理の安心感といった付加価値が、高い支持を集めているようだ。
柳川教授は、「賃貸物件の価値は、かつては駅から近いとか、間取りが多い、床面積が大きいといった限られた要素だけでしか訴求しようがありませんでした。最新テクノロジーによって、さまざまな付加価値サービスが提供されるようになったのは、より多様な選択ができるという意味で、入居者にはありがたいことかもしれません」と語る。
データ分析を武器にオーナー利益を最大化する
一方でrobot homeは、不動産オーナーによる資産運用の利便性を高めるAIやDXにも力を入れている。
すでに、パソコンやスマートフォンのアプリで物件の購入から管理、売却までが完結するプラットフォームを提供。将来的にはAIによる収支予測や新規取得物件のレコメンドなど、テクノロジーの進化に合わせたサービス拡充を計画している。
robot homeが提供する木造土地付き1棟アパートは、ほとんどが好立地物件にもかかわらず、表面利回りは平均年6%と高い。ちなみにRC造土地付き1棟の場合、都市部では表面利回り年2~3%が相場だ。
RC造より建築コストが低く、取得価格を抑えやすいことも理由の一つだが、データ分析に基づく戦略的な物件企画も大きい。主力の単身向けに加え、近年はデータから「マンション価格高騰で購入を諦めた層」の賃貸ニーズを捕捉し、市場で不足する2LDKなどの供給も強化。高い賃料設定でも入居者が決まり、高い利回りに寄与している。
「当社自身も業務にテクノロジーを活用して、取得していただく物件の価値向上に貢献しています。単純業務にはAIエージェントを使って内部コストを抑え、その分、販売価格を少しでも安くするなど、テクノロジーの力でお客さまに還元できる利益を増やしているのです」と古木CEOは説明する。
robot homeの取り組みで明らかなように、テクノロジーが不動産の価値を変える時代は、すでに始まっている。
古木CEOは、今後の目標として、「プロの投資家と一般オーナーの間にある『情報格差』をなくしたい」と語る。「機関投資家が専門家を雇うように、全てのオーナーに『AIアセットマネジャー』を提供したいと考えています。運用方針の策定から出口戦略までをAIが助言することで、誰もが最適な資産形成を行える未来を、目指していきます」と力を込める。
不動産投資の未来は、ますます面白くなりそうだ。
