原油価格は空爆の一報が伝わると急伸した。しかし、このまま急上昇を続けることはなさそうだ。空爆の影響は早期に落ち着き、その後、価格は緩やかに上昇するという見方が大勢だ。
シリア空爆によって中東全体が手を付けられない騒乱状態になり、原油価格は一本調子で急上昇する……そのシナリオはなさそうだ。専門家の間では、空爆による価格上昇は早期に収束、その後緩やかに上昇という見方が有力だ。
確かに空爆が行われた日本時間4月7日午前9時40分ごろを境に、原油価格(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI)は1バレル当たり51ドル台半ばから急伸。一時は同53ドル台後半に達した。
だが、すぐに空爆の影響は収まった。12日の米ロ外相会談で、対テロ戦で今後も協力することが確認されたと伝わると、原油価格は落ち着きを取り戻し、同52ドル台にまで下落した。
冷静に考えれば、この下落は当然だろう。シリアはそもそも石油輸出国機構(OPEC)の非加盟国で、原油生産量は他の中東諸国と比較しても少なく、原油供給に大きな影響を与える国ではない。それに空爆は限定的で、米国が過激派組織「イスラム国」(IS)打倒を最優先するというトランプ政権の中東政策を変更したわけではなかったからだ。
ただし、だからといって原油価格が凪の状態になるとはいえない。空爆によって原油価格の押し上げ要因が、中東以外で新たに生まれている。