変化への感度が良い企業ほど
女性が生き生きと働いている

──女性の管理職がなかなか増えない理由は?

大阪府出身。小学校教員を経て35歳で、社員教育研究所に入社。営業未経験から3年後にトップセールスになる。2001年に独立。社員教育のエキスパートとして全国で展開する講演・研修は多くの企業から支持され、リピート率98%。女性限定の「トップセールスレディ育成塾」主宰。

朝倉 ロールモデルとなる女性管理職が少ないのが理由だと思います。ピラミッド型の頂点に立てば、部下を顎で使えるという時代はとっくの昔に終わり、もはや古いボスマネジメントは通用しないのですが、そういう男性管理職が現場ではまだ多いのです。

坂東 リーダーシップに対するイメージを変える必要がありますね。例えば、権力で人を動かすのではなく、メンバー各人の資質を引き出しながら、総体としてのリーダーシップを育成するインクルーシブ・リーダーシップ。女性はこれが得意な人が多いです。

──経営トップの意識は重要ですか?

朝倉 重要ですね。経営トップが女性活躍推進にどう取り組むかで、今、企業は二極化しています。時代の変化を先読みできる企業は、女性たちが生き生きと働いています。

坂東 過去の成功体験を後生大事に繰り返している企業では、女性は活躍できません。変化に対して感度が良い企業だからこそ女性が活躍できる。今ダイバーシティといわれていますが、女性の能力も引き出せない企業がグローバル市場で成功するはずがありません。

女性にもビジネスの
修羅場をくぐらせる機会を

──女性活躍推進には、女性自身の意識も大切ですか?

朝倉 女性の中には未経験のことを「苦手」と言い、新しい仕事を勧められたとき、未経験を理由にチャレンジを諦める人がいます。しかし、本来女性は資質的に営業が得意なはずで、技術やスキルさえ学べば誰にでも可能性が広がると思います。転職が難しい年齢になっても、フルコミッションで営業をやりますと言えば、どこでもウエルカムなのです。

坂東 間接部門と違って営業は数字がはっきり出るので、評価が目に見えますからね。一方で女性活躍推進には“わな”もあります。女性を登用して管理職の割合を増やすだけで、業績が上がるわけではないのです。女性だけのチームをつくったら、必ずヒット商品が生まれるわけでもない。女性に対しても、管理職を育てる教育やビジネスの修羅場をくぐらせて鍛えることが必要で、その機会を与えることが今の企業に求められていると思います。

ダイバーシティ経営にも
欠かせない女性活躍

 今、日本企業が直面する経営環境から、ダイバーシティへの取り組みの必要性が高まっている。そのダイバーシティ経営の柱となるのが女性活躍だ。ただし企業が社会からの要請で女性活躍を受動的に対応している限り、そのメリットはCSRや採用活動の評判などに限定されてしまう。女性活躍に早くから取り組んできた企業ほど、こうした状況に気付き、最終的に個性を生かし切る人材戦略につなげることを考えている。経済産業省では、競争戦略としてのダイバーシティの実践に向けて検討会を立ち上げており、その行動ガイドラインを策定している。

 右の図は、同検討会が作成した主要市場の平均ROEと女性取締役比率の比較。日本における女性取締役比率がかなり低い事実が明らかになっている。