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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

まさに国民不在の政争――大震災による「政局的幸運」を民主党内“反菅勢力”や野党が利用した倒閣劇

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第11回】 2011年6月8日
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 菅直人内閣に対する内閣不信任決議案が衆院本会議に提出された。菅首相は早期退陣を表明して民主党内の造反を抑え、不信任決議案は大差で否決された。だが、菅首相が一転して、退陣時期の先延ばしを試みたため、野党が反発を強め、民主党内でも「菅降ろし」が再燃した。結局、菅首相は早ければ今月中にも退陣することになった。

 民主党「反菅勢力」や野党は、震災復興に与野党が一致協力するために菅首相の辞任が必要と主張した。だが、それは表向きの話だ。本音は、震災復興を進めるための「倒閣」ではなく、むしろ「倒閣」のために、大震災が作り出した有利な状況を利用したのだ。

「菅辞めろ!」大合唱の
本当の理由

 谷垣禎一自民党総裁は、菅内閣不信任の理由として、霞が関の官僚機構をうまく活用できず、福島第一原発の事故処理をめぐる混乱や被災地の復旧の遅れを招いたことと、民主党内を混乱させた指導力の欠如を挙げた。そして、菅首相に「あなたが辞めれば与野党を超えて新しい体制をつくる工夫はいくらでもできる」と辞任を迫った。

 だが、震災と原発事故対応の不手際は、客観的にみて首相一人の問題ではない。例えば、「縦割り行政」の弊害など、政治・行政システムの問題も深刻だ。また、菅首相が辞任すれば与野党の政策合意が簡単にできるわけでもない。むしろ「子ども手当」などの「マニフェスト政策」の撤回と消費税増税を激しく拒んできたのは「反菅勢力」だ。「菅辞めろ!」の大合唱は、感情論そのものだ。

 菅首相への感情的な反発は、彼の「裏切り」に対するものだ。菅首相はかつて、石原伸晃、塩崎恭久(以上、自民党)、枝野幸男、前原誠司、野田佳彦(以上、民主党)らの「政策新人類」をまとめ、「大蔵省改革」(財政金融の分離など)や金融国会に取り組んだ過去がある。菅首相は、予算編成権の内閣移管など「大蔵省解体論者」だった。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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