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ギャンブル依存症の最新の定義は「プロセス依存」

井手ゆきえ [医学ライター]
【第340回】

 厚生労働省の調査によると「都市圏の成人の2.7%はギャンブル依存症の経験がある」らしい。約100項目の質問からなる面接調査の結果なので、信ぴょう性が高い推計値だろう。

 ギャンブル依存が欧米で注目され始めた1960年代当時、診断名は「強迫性ギャンブリング」だった。不合理な行動をやめたいのにやめられず、繰り返してしまう「強迫性障害」の一つとされていたのだ。

 その後、米国の「精神疾患の診断と統計マニュアル(DSM-3)」で正式に精神疾患として「病的ギャンブリング」が記載され、衝動性をコントロールできない障害と位置付けられた。

 そして2013年に改定された最新のDSM-5では「ギャンブル障害」の診断名で、アルコール依存症と同じ「物質関連障害と嗜癖性障害」に分類された。

 これに関しては専門家の間でも異論はあるが、アルコール依存症と同じく脳の報酬系が関連すること、また禁酒ならぬ「禁賭博」でイライラ、発汗など離脱症状が生じ、より大きな興奮を得るために「もっと、もっと」と大金を投じずにはいられなくなる「耐性」ができるなど、ギャンブル障害とアルコール依存症はよく似ている。

 脳の報酬系が最も活性化するのは、勝った瞬間ではなく「勝つかもしれない」というひりひりするような「報酬予測」の段階。勝ちの快感はその「おまけ」にすぎない。興奮が収まれば即、次の報酬予測を渇望するようになる。あの快感の前では大損も家族の嘆きもささいなこと。逆に「次は取り返す」と深追いする理由になるだけだ。ギャンブル障害はギャンブルの一連の「プロセス」に対する依存症なのである。

 ギャンブル障害の治療には「抗渇望薬」が使われるが(日本では未承認)、何より賭け事に近づかないことが重要。また、他の健康的な依存先へ代替することが病的依存の防波堤になる。

 健康的な依存先? と思うが、仕事で利益や数字を追うプロセスも実は同じこと。庭で野菜を育て、収穫と称賛という報酬のために一喜一憂するのもいい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 


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