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飯田哲也の新・エネルギー原論
【第4回】 2011年6月23日
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飯田哲也 [環境エネルギー政策研究所所長]

自然エネルギーの実力は世界が実証済み
日本で拡大しない要因は政治と政策の不在

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自然エネルギーの成長性余地は大きい。ドイツの成功実績をみれば、その実現可能性が高いこともわかる。しかし日本では、自然エネルギー拡大のカギとなる「全量買取制度」が遅々として進まない。これは、リアルなビジョンを伴った政治的なリーダーシップの欠落、そして知見と洞察力を備えた政策担当者の不在、さらには彼らや研究者たちが議論するオープンな場の欠如に起因する。福島原発の事故を契機に、腰を据えた議論やそうした場の拡大を期待した。残念ながら、未だ変化はないようだ。

 自然エネルギーの成長可能性は大きい。

 2011年春に発表された環境省の「自然エネルギー導入ポテンシャル調査」によると、住宅の屋根を除いた太陽光発電のポテンシャルは1億5千万kWだという。住宅の屋根を加えた試算では、およそ2億kWの潜在量が見込まれている。風力発電に至っては、陸上で2億8千万kW、洋上で16億kWという途轍もなく大きな導入可能性があることがわかっている。

 つまり、日本には太陽光発電、風力発電を導入できる余地が十分にある。これはあくまで、詳細な地理情報システムデータを用いて、導入できそうにない場所を除いた調査結果によるものだ。

 あとは、それをいかに実現するかが問題だ。

 先行する好例は、環境先進国ドイツである。その原子力政策から振り返っておこう。

 2000年に、シュレーダー前首相の連邦政府と主要電力会社との間に「脱原発合意」が成立した。これは、ドイツの基本路線として翌年成立した「脱原子力法」に明記された。

 ところが2010年、ドイツはメルケル首相のもとで原発推進策に転じた。ただし、日本の原子力立国戦略のような「妄想的推進」ではなく、あくまで原発閉鎖の時期を先送りするもので、全体としての「脱原子力法」の撤廃ではないことに注意していただきたい。

“フクシマ”を機に自然エネルギーにシフト
ドイツを先頭に脱原発が加速している

 ともあれドイツは、メルケル首相のもとで原発の閉鎖期限を緩めるための法改正を検討していた矢先に、3.11で福島第一原発の事故が起きたのである。すると直後から、もとの合意より遥かに早いタイミングで原発を閉鎖する動きに再び転じた。

 ドイツ政府の動きは速かった。福島原発の事故が起きた4日後には、古い7基(その後にもう1基)を一時停止。6月6日には、原子力法改正案など10法案を閣議決定し、一時停止中の8基はそのまま閉鎖、また残り9基を2020年から2022年までの間に閉鎖する(1基のみ非常用に温存する)ことを決定した。

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飯田哲也 [環境エネルギー政策研究所所長]

1959年、山口県生。京都大学原子核工学専攻修了。東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。大手鉄鋼メーカー、電力関連研究機関で原子力の研究開発に従事した後に退職。現在、非営利の研究機関の代表を務めつつ、複数の環境NGOを主宰し、科学者でもある。自然エネルギー政策では国内外で第一人者として知られ、政策提言と積極的な活動や発言により、日本政府および東京都など地方自治体のエネルギー政策に影響を与えるとともに、国際的にも豊富なネットワークを持つ。主著に『北欧のエネルギーデモクラシー』、共著に『グリーン・ニューディール―環境投資は世界経済を救えるか』(NHK出版)、『日本版グリーン革命で 経済・雇用を立て直す』(洋泉社新書)、『自然エネルギー市場』(築地書館)など。5月に『今こそ、エネルギーシフト 原発と自然エネルギーと私達の暮らし』(岩波ブックレット/共著)を刊行予定


飯田哲也の新・エネルギー原論

東京電力・福島第一原子力発電所の事故は、私たちに様々な問題を提起した。夏場の電力不足への対応という短期的課題だけでなく、原発存続の是非や、電力の供給体制のあり方といった中長期的な政策に及ぶ議論が一気に噴出している。エネルギー政策の第一人者として知られる飯田哲也・環境エネルギー政策研究所所長が、問題の本質をひもとき、合理的な解決策を探求する。

「飯田哲也の新・エネルギー原論」

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