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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

菅首相「居座り」の意外な効果!?
与野党は今こそ“政局より政策”へ

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第12回】 2011年6月22日
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 この連載が主張した「製造業による経済成長に価値を置かない『豊かな国家』」(第6回を参照のこと)を模索する動きが出てきた。企業は「就業時間前倒し」「残業をしない」「休日出勤をしない」「夏休みを固定で長めに取る」などの、「節電」を前提としたワークスタイルの検討を始めた。長期的な電力制限によって、製造業の元通りの復活は幻想に過ぎない。このワークスタイルの変化を日本社会に定着させるべきだ。

菅首相の「居座り」で、
政策論争が起こった

 退陣表明をしたはずの菅直人首相が、その時期を明確にせず、新たな政策課題を次々と打ち出した。国会の大幅な会期延長も決定し、復興担当相の任命とともに内閣改造の噂も流れている。野党は「政権への居座り」だと反発を強めているが、菅首相を退陣させる有効な手立てはない。

 岡田克也幹事長ら民主党幹部も菅首相に退陣時期の明示を求めたが、菅首相は今年度第2次補正予算と特例公債法の成立に加えて、自然エネルギーの普及を図る全量固定価格買い取り制度の関連法案の成立を退任の条件とした。菅首相が、与野党の電力業界に近い議員の反対が強いこの法案成立までの続投にこだわれば、退任時期が大幅に遅れる可能性がある。

 国政が停滞する懸念が強まっているが、菅首相が次々と政策課題を打ち出すことは悪いことばかりではない。政治の焦点が「ポスト菅」「大連立」という政局から、どの法案成立を菅首相の「花道」とするかという「政策論争」に移ってきたからだ。

 この連載は、「復旧」に十分な予算を付けながら、「復興」に関してはじっくりと時間をかけた議論を行うべきと主張してきた(第7回を参照のこと)。拙速な「復興策」の決定は、単なる従来型の国家モデルの継続を意味するからだ。だから「復旧」に集中した2次補正予算が組まれること自体に問題はない。深刻なのは、政治が「政局」に集中し、復興後の国家像をしっかり議論していないことだ。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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