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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

日本人は大震災で思い出した威厳を忘れずに、新たな「豊かさ」を追求すべし

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第6回】 2011年3月23日
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 東北関東大震災で被災された方々には、心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々のご冥福と行方不明の方々が一刻も早く見つかることを、そして、早く平穏な日常に戻られますことを、お祈り致します。

威厳ある態度を
「思い出した」日本人

 大震災が起きた3日後の3月14日から19日まで、研究会に出席するためデンマークに出張した。デンマークのTVでも大震災が多く取り上げられていた。世界のメディアが、危機的な状況での被災者の助け合い、譲り合い、励まし合う姿、そして被災地で物資の奪い合いや略奪が起きていないことを称賛しているように、私の参加した研究会でも、デンマークの大学教授たちから、日本人の威厳ある姿は驚くべき事と称えられた。

 ただ、私はこの日本人に対する称賛に、正直少し違和感がある。確かに被災者の方々の態度は立派だ。しかし、この震災が起きるまで、日本人はお世辞にも規律正しい、威厳ある姿を見せていたとはいえないのではないか。ネットを利用した大学入試での不正行為、大相撲の八百長事件、政治家・官僚・企業が繰り返す汚職事件、子どもの虐待、通り魔殺人など異様な犯罪の数々、そして、長寿年金不正受給問題。これらモラルのかけらもないさまざまな問題を起こしたのも、同じ日本人なのだから。

 略奪などの犯罪が日本の被災地では起こっていないというが、外国でも一定の教育を受けた層の人間は、日本人同様に規律正しい。欧州に7年間暮らした私からすれば、日常生活での「非紳士的態度」に不快感を持つことは、むしろ日本の方が多い。

 例えば、日本では電車に乗降する時、混雑した街を歩いている時、人を突き飛ばしたり押しのけたりしても謝ろうともしない人が多いが、欧州ではそんな人はほとんどいない。また、日本では店頭で長蛇の列に並んで文句をいう人がいるが、欧州ではほとんどの人が静かに順番を待っている。欧州でよく見られる紳士的な態度が、日本では見られないことが多い。

 震災が、日本人に規律正しさを思い出させたというなら、その通りだろう。しかし、それは過大評価すべきではないし、海外と違うなど言われて喜ぶのは間違いだ。大事なのは、震災で思い出した日本人の威厳を、今後も忘れないことだ。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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