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防災メディアとしての役割と経営の間に揺れる
被災者のライフライン「ラジオ石巻」の知られざる葛藤

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]
2011年6月29日
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 東日本大震災で深刻な被害を受けた宮城県石巻市で、どこに行っても流れているラジオ放送がある。石巻市と東松島市を放送エリアに持つ、地元のコミュニティFM局「ラジオ石巻」だ。

 地震発生直後から、防災情報や被災者向けの貴重な情報を放送し続けてきた同社は、これまでにないほど、たくさんの地元の人たちから聴かれる放送局になった。また、数々の全国区のメディアにも取り上げられ、大震災を機にあらためて地域ラジオの強みを見直された例として、注目を浴びるようになった。しかし、防災メディアとしての頑張りを続ける一方で、経営環境は厳しさを増している現実がある。

震災を経て“史上最高の聴取率”に
被災者の生活を力強く支えるラジオ局

 「ラジオ、聞いてますよー。これしかありませんから」

 「今でも、ラジオが頼りです。困ってるでしょって、近所の人が持ってきてくれたんです」

 地震から3ヵ月が経ち、被災者の長引く避難生活の問題が大きくなりつつある。筆者は、主に在宅避難者の取材を続けているが、被災者には、普段からどのような方法で情報を得ているかを尋ねるようにしている。役所での手続きごと、ゴミ収集の予定、炊き出しやお風呂の情報、地域の拠点病院からのお知らせなど、ごく最低限の生活水準を守っていくための必要な情報を、孤立したような世帯では知らずにいることもあるからだ。

 津波でテレビやパソコンが流失・故障した人にとって、お金を掛けずに情報を入手する方法は、ラジオか公報、口コミのどれかだ。とくにラジオは、ライフラインの寸断されていた地震直後でも、外部とつながりを保ち続けた唯一の存在だった。その頼もしさを、地域の人たちは覚えている。

全国のラジオ局などから支援物資として送られてきた、携帯型ラジオ。ラジオ石巻では、2000個以上をこれまでに料配布している
Photo by Yoriko Kato

 「全国のラジオ局から支援物資として送られてくる携帯型ラジオを、いまでも時々配っているんですが、“配布しますよ”って放送すると行列ができて、バッとさばけてしまうんです。これまで数千台も配りました。ラジオを持っていなかった、あるいは、持っていても携帯ラジオではなかった人が、いかに多かったか、ということですね」

 こう語るのは、「ラジオ石巻」の鈴木孝也放送局長だ。

 同社のある石巻市蛇田の丸井戸地区は、津波の被害はギリギリで免れたが、震災当日の夜には、送信ができなくなり、放送が中断した。そこで、送信アンテナが設置されている高台の神社まで放送機材を運び、たまたまそばにあったプレハブの小屋を急遽スタジオとし、2日後の3月13日には放送の再開にこぎつけた。

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加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスターや番組ディレクターを経て、取材者に。防災、気象、対話、科学コミュニケーションをテーマに様々な形で活動中。「気象サイエンスカフェ」オーガナイザー。最新著書は、ジャーナリストの池上正樹氏との共著『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)でも写真を担当し、執筆協力も行っている。他に、共著で『気象予報士になる!?』(秀和システム)。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。
ブログ:http://katoyori.blogspot.jp/


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