この20年で時代は大きく変わったが、今後20年の変化は、その比ではない。思いもよらない変化が次々と起きるこれからの社会では、「たくましさ」、「地頭のよさ」、「社交性」が常に求められるのだ。「世界標準の子育て」では、4000名のグローバル人材を輩出してきた著者が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を紹介していく。
「ガリ勉で内弁慶」タイプのアジア人
日本、中国、韓国と儒教の影響を受けたアジア諸国の子育てに共通するのが「偏差値主義」です。これは、「ハードスキル(知識)偏重」と言い換えることもできます。
教育事業をする中でさまざまなアジア人と接してきましたが、アジアの子どもの大部分に共通するのは「ガリ勉で内弁慶」タイプだということです。
これは、家庭における「ハードスキル(知識)偏重教育」の結果です。しかし、◯×式のペーパーテストで満点が取れるだけではグローバル社会では通用しません。
たとえばアメリカの大学入試では「テストの点数」は学生を評価する一つの基準に過ぎず、テスト成績に加えて、リーダーシップ、社会性、協調性、創造力、問題解決力など「考える力」と「コミュニケーション力」を総合的に評価して合否を決定するのです。
ハーバード大学やプリンストン大学の入試では、SATと呼ばれる◯×式テストで満点を取っても不合格になることがあります。テスト結果だけで合否を決めていると「同じタイプの学生」に偏ってしまうからです。
フィンランドが学力総合世界一になった理由
「世界一子育てがうまくいっている地域」と呼ばれるフィンランドは、2004年の国際学力比較調査(PISA)で読解力と科学部門で1位、数学は2位、問題解決力では3位にランクインし、総合で世界1位となっています。
フィンランドの授業では先生が教室の前に立って講義をすることはありません。生徒一人ひとりが学習目標を定め、そのために情報を集めたり、先生に質問したり、グループで議論したりします(このように生徒が主体的に学習する方法を「アクティブラーニング」と呼びます)。
その過程で、生徒は本やインターネットで知識を増やし、周囲と議論を交わしていきます。そして、自分の考えを深め、自分の考えの思い込みや偏りに気づいていくのです。
フィンランドも、「◯×式テスト」による評価をずっとしていましたが、1980年代からこの方式に切り替え、世界一になることに成功しました。
「自信」「考える力」「コミュニケーション力」を軸にした教育へ
昨今のニュースを見ていればわかるように、「名のある大手企業に入っていれば安泰」という世の中は、すでに終わりを迎えつつあります。
いつ、何が起きるかわからない。そんな時代で子どもたちが自分の意志で生きていくには、変化に強くなるための資質を身につけなければなりません。
その資質とは、具体的には3つ、「自信」「考える力」「コミュニケーション力」です。
・チャレンジ精神や、どんな挫折もバネに変えられるための自信
・自分で情報を取捨選択し、判断をしていくための考える力
・いつ、誰とでも協力関係をつくれるコミュニケーション力
これらを鍛えることが、子育てにおける第一優先課題です。
子どもにお受験をさせたり、エスカレーター式の学校に通わせたりといった目的を優先させた子育てでは、むしろ、大事な3つの資質が育たない場合が多いのです。
それはなぜか? 次回は、韓国の子育て事例を引き合いに、より詳しく見ていきます。
(この原稿は書籍『世界標準の子育て』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)