将来性とリスク判断が正確なのか

 アルファ碁は、厚みのもつ将来性とリスク判断が、より深く正確にできるようになったと考えられる。膨大な自己対戦から得たAIの経験値が、人間をすでに大きく超えているのだ。

大橋拓文(おおはし・ひろふみ)/1984年、東京都出身。菊池康郎氏(緑星囲碁学園)に師事。2002年入段。第1回おかげ杯準優勝。2013年六段。コンピュータ囲碁を活用した研究を日本棋院月刊誌碁ワールド「IGOサイエンス」として連載中。人工知能学会誌、情報処理学会誌に寄稿。経団連・21世紀政策研究所等にて対談・講演。在ドイツ日本大使館杯やヨーロピアン囲碁コングレス等海外普及にも取組む。著書に「AI時代の新布石法」(マイナビ)、他多数。

 2017年に登場した最新版のアルファ碁の特徴は、この三々入りに代表されるように、人間にとってとても危険で、理解しにくい手が多く見られるのである。現在、この三々入りはプロ棋士も試行錯誤しながら実験的に試し、流行している。成功率はフィフティ・フィフティといったところである。

 棋士として毎日アルファ碁の棋譜を検討していると、アルファ碁の強さに驚くとともに、AIを信じすぎることの怖さを身をもって実感している。アルファ碁は人間より強くなったことは間違いないが、アルファ碁の手を人間が使っても、うまくいかないことが多いからだ。

 私たちがアルファ碁に追いついていないからなのか、アルファ碁の自己対戦で生み出された手は本当にいい手なのか、誰も知る由はないのである。また、アルファ碁が1年前に好きだった手を、現在のアルファ碁は全く打たなくなった、ということもある。

 現在、アルファ碁以外にも、ディープラーニングを活用した囲碁AIの開発が活発に行われている。特に力を入れているのが、日本の「DeepZenGo」と、中国の大企業テンセントが作る「絶芸」だ。そしてこれらは、打つ手が少しずつ違う。人間のように囲碁AIには個性があるのだ。これは元々の学習データの違いや、進化過程での自己対戦に左右されるようである。

 このように、すでに囲碁ではAIの示す手が、人間の考えと違う手を示すようになってきた。他の囲碁AIはまだアルファ碁には及ばないものの、人間世界トップと同等の実力があり、それらを比較することでアルファ碁の手を検証していくという試みも始まっている。

 そして遠からず、社会的な問題でもこのようなことが起こるだろう。筆者は社会より一歩早く、AIの最前線に置かれている囲碁界でAIの進化の様子を観察し、人間とAIが向き合い活用する道を模索したいと思っている。