新刊『借りたら返すな! いちばん得する! 儲かる会社に変わるお金の借り方・残し方』では、1000件以上の財務戦略を立案してきた著者による「お金の調達力」を上げるための方法を紹介しています。本書から、「お金と会社の関係」「銀行との 正しい付き合い方」「節税対策のウソ・ホント」「お金で困っている企業が意外と知らない対策」「企業再生で成功したノウハウ」などを公開します。

借金を返すのは、「社長」ではない

「社長! 借りたものは返してくださいよ! どうやって返済するんですか!?」

 銀行は、お金が回らなくなり借金の返済ができなくなった会社の社長に、こう迫ります。

 社長たちは萎縮し、「なんとかしなくては……」と精神的に追い込まれてしまいます。

 もちろん、悪化した収益を回復できるような改善の秘策があったり、ビジネスモデルを転換して返済できたりすれば、問題ありません。しかし、回復まで待ってもらえるわけでもなく、たいていの企業はそんなに簡単に改善するものではありません。

 にっちもさっちもいかなくなり、選択肢もない。やがて、目の焦点が合わなくなったり、挙動不審になってしまったりする社長たちを企業再生の現場でたくさん見てきました。

「借金で首が回らない」「自分の自由な意思で生きていない」、まさにそんな感じです。

 残念なことに命を絶ってしまった社長もいました。目的は「生命保険金」です。お金を返す目途がまったく立たず、会社も回復する可能性がほぼない状況で、「借金を返すには、生命保険金しかない」と考えてしまったようです。

 なぜそこまでして借金を返さなければいけないのでしょうか?

「借りたものは返す」―当たり前です。「借りた人」が、借りたものは返すべきです。

 会社の借金は誰のものでしょうか?

 誰が借りたのでしょうか?

 当たり前ですが、「会社」です。

 そうであれば、借金を返すのは、「会社」であって「社長」ではありません。

 社長個人が追い込まれる理屈などありません。ただ会社をうまく経営できなかっただけです。それでも借金が返せないと一家離散だとか、自己破産しなければと思って追い込まれてしまいます。

 なぜでしょうか?

 中小企業の場合、一般的に社長は代表取締役とイコールの関係です。代表取締役とは株式会社を代表する権限(代表権)を持った取締役をいいます(会社法第349条)。

 まず、当たり前のことを整理しましょう。

・借入をするという判断をしただけ
・借入が返せなくなってしまった株式会社の代表権を持っているだけ

 株式会社の代表者として借入が返せるように努力することは、あくまでもビジネスとして大事です。

 では、社長が個人の自宅を手放さなければならなかったり、自己破産しなければならなかったりするのはなぜでしょうか? 

 答えは単純です。「連帯保証人」だからです。

 銀行から借入をするときに、社長個人を連帯保証人にさせられているからです。

 もし、会社に回復の余地がなく法人破産する場合、「連帯保証人」として会社の借金を返済しなければいけないため、個人が返済できなければ自己破産するわけです。

 逆に連帯保証人になっていなければ、会社の借金を返さなくても個人にはまったく影響しません。

 まずこの当たり前のところをしっかり理解する必要があります。

 銀行からの借金が怖いのは、連帯保証人になるからです。

 同じ負債でも、買掛金はどうでしょうか? 月末締めの翌月末払いの場合、1か月取引先からお金を借りているのと同じ状態です。

 未払給与はどうでしょうか? 毎日頑張って働いてくれている社員の給与を支払日まで借りているのと同じ状態です。

 大切な取引先・社員から実質的に借入しているのに、なんとも思わないのは連帯保証人になっていないからです。

 そうであれば、連帯保証人にならなければ、銀行はまったく怖くないと思いませんか。

「でも連帯保証を外すことなんてできないでしょ?」

 多くの社長がそう言います。

 結論から言うと、一定の条件を満たせば、連帯保証を外すことは可能です。

 連帯保証が外れるように、節税なんかせずに、きちんとお金を残す強い財務体質を目指せばいいのです。