ハーバード、スタンフォード、MITなどの近年の膨大な研究成果を背景に、いま最も合理的に能率と生産性を高めると考えられる「一点集中」の方法を提示し、全米で話題となっているデボラ・ザック著『SINGLE TASK 一点集中術』。シンプルでありながら極めて効果が高いという同書の方法とは、いったいどんなものなのか?今回はその内容から、一見効率がよさそうでじつは不効率な人たちの真実を紹介する。

「マルチタスク」は実際には役に立っていない

 マルチタスクは役に立たない。いや、もう一歩踏み込んで言わせてもらいたい。マルチタスクなどというものは、そもそも存在しない。このただならぬ、だが科学的裏付けのある断言については、また詳述する。

 ではなぜ、これほど多くの人たちが「マルチタスク」という現代病に感染しているのだろう? 私たちはいま、この重い現代病に集団感染し、次のような症状を訴えている。

・しなければならないことが多すぎて、時間が足りない。
・生活がゴチャゴチャ、頭のなかもゴチャゴチャ。
・毎日の用事が増えるいっぽう。
・「集中力を奪う邪魔物」が嵐のように押し寄せている。

 このリストは氷山の一角だ。思いあたるふしがあれば、自分でもいくつか症状を挙げてみよう。

「同時進行」をやめるだけで成果が上がる

 自分の症状を挙げおえたら、ある男性の話を参考にしてほしい。日常生活でどんなふうにマルチタスクを試みていますかと尋ねたところ、彼はこう答えた。

「マルチタスクが及ぼす悪影響には、おそろしいものがある。運転中にメールを読んでいたら、どうなると思う? 前の車に追突する。電話で同僚と仕事の話をしながら、新聞を読んでいたら? 納期に間にあうはずのない仕事を、『まかせてくれ』と安請け合いしてしまうだろう。奥さんが来週の予定について話しているのに、テレビのフットボール中継を観ていたら? 娘の誕生日に出張の予定をいれてしまうのさ」

 人生という名の途方もなく大きな波が打ち寄せるなか、私たちは必死になって一度に複数のタスクをこなそうとしている

 その結果、注意散漫な生活に歯止めがきかなくなっている。集中力がなくなり、ストレスがたまり、目の前の作業とはなんの関係もないことでヤキモキする。おまけにそうすることで、いま目の前にいる人たち――同僚、顧客、店員、社員、仲間、家族――に無礼をはたらいているのだ。

 注意散漫の状態を続けていると、結局のところ、なんの成果もあげられないうえ、対人関係まで壊しかねない。

 マルチタスクをこなそうとする試みと能率の悪さには、相関関係がある。これは多くの研究からわかっている厳然たる事実だ。

 本来、「一度に複数の作業をしようとする」こと自体が「気が散っている」ことを意味する。成果をあげたい――あるいは少しハードルをあげ、めざましい成果をあげたい――のなら、脇目もふらず、目の前の作業に集中するしかない。

 以前、ある父親が大学を卒業したばかりの息子に向かって、こう諭していたのを耳にしたことがある。「いつだって選択肢は2つだ。1つのことをうまくやるか、2つのことをヘタにやるかだ」