ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
岸博幸のクリエイティブ国富論

日本に必要な“Breaking All Illusions”
「増税不可避」「電力改革不可能」の幻想を捨てよ

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第154回】 2011年9月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 今週は変なタイトルですみません。Breaking All Illusionsとは、今週発売された、私がこよなく愛するプログレメタルバンド、Dream Theaterの新アルバムの中の一曲のタイトルなのですが、今の日本の政策を巡る議論でもっとも必要なことを端的に示しているのではないでしょうか。

経済財政政策を巡るillusion

 経済財政政策を巡る議論では、様々なillusionが主張されています。

 その典型例は、復興財源、即ち10兆円超となる第三次補正予算の財源を巡る議論です。まずは復興国債を発行して対応するけれど、政府はその償還財源について所得税や法人税の臨時増税で対応しようとしています。そのための理屈が、「将来世代にツケを回さない」という非常にもっともらしい主張です。

 しかし、被災地に道路など新たなインフラを建設し、また住民の居住地域が高台に移った場合、当然ながら現世代のみならず将来世代もその便益を享受することになります。それなのに、なぜそのための国費の負担は現世代だけで賄わないといけないのでしょうか。

 同様のillusionは、財政赤字の削減を巡る議論でも見られます。格付け機関が8月末に日本の国債も格下げしたとき、それが財政再建まったなしの警告であり、そのためには増税しか手段がないかのような報道が多くされました。

 しかし、そもそも格付け機関の判断がどれだけいい加減なものなのかについてはほとんど報道されていません。

 例えば、米国のS&Pは米国債の格付けをトリプルAから1段階引き下げましたが、その一方で、今年に入って1万4千もの新たな証券化商品(合計360億ドル)にトリプルAを与えています。リーマンショックの原因となった証券化商品と同じように、住宅や自動車ローンなど様々なものが混ぜこぜになっているにもかかわらず、です。米国では「徴税能力を担保とした債務の格付けが特段の追加収入の当てもない証券より低く格付けされるのは意味不明」という批判が根強く言われています。

 また、欧米での財政危機と金融危機を受け、日本の債務は欧米よりも格段に多い、だから早く消費税を増税しないと日本でも国債の金利が跳ね上がって国家破綻に追い込まれかねない、といったトーンの報道ばかりが目立つのも、ある意味でillusionではないでしょうか。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


岸博幸のクリエイティブ国富論

メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

「岸博幸のクリエイティブ国富論」

⇒バックナンバー一覧