三菱商事6位、三井物産11位、住友商事16位、伊藤忠商事18位、丸紅24位――。上場企業(2011年3月期)の連結当期純利益ランキングで、大手5総合商社すべてが上位25位内にランクインした。5社トータルの利益は、この10年で約5倍にふくれあがった。今期もさらに増益が予想され、順位も繰り上がると見込まれる。
三菱商事1位を筆頭に、2011年版就職人気ランキング(男子文系、ダイヤモンド・ビッグアンドリード)では、同じく大手5総合商社が上位15位内に顔を並べ、学生人気を不動のものにしている。ただし、その実像はよくわからない。正体不明だ。
海外投資家は、商社を「資源・エネルギー会社」とみなす。実際、資源・エネルギー部門は利益の約6割を稼ぎ出すが、それも商社のひとつの顔にすぎない。黒子に徹しながら新興国・成長国で蠢き、バリューチェーンを築き、新ビジネスにしたたかに食らいつく。
こうした得体の知れない「注目度ナンバーワン業界」の秘密を明らかにしようというのが、本特集だ。
第1章では、そうした商社の不可思議を海外からの目を通して浮かび上がらせる。ブランドやアニメなど、流行の影で黒子の役割を果たしたりもしている商社。何でもやるという雑食性が、顔を見えにくくしている。
第2章は、商社の「成長」の秘密を明らかにする。激しさを増す新興国の陣取り合戦。成長市場に地歩を築くべくその最前線で蠢き、汗をかく商社マンの実態を追う。ナイジェリアへのクルマ輸出ビジネスで成功、パートナーから絶大なる信頼を得て、酋長(!)となった商社マンもいる。
第3章では、「儲け」の秘密を絵解きする。モノを買い、売りさばく伝統的なトレードにこそ、商社の底力は現れる。川上から川下までバリューチェーンを築き、儲けのタネを追いかける。商社外しの動きもものかは、自らの姿を変えてビジネスに食らいつくしたたかさも商社の本質だ。
第4章は「活力」の秘密を解き明かす。トライ・アンド・エラー、新規参入と徹底が当たり前のように繰り返されることこそ、組織内に活力を生んでいる。かつての花形・情報通信ビジネスの盛衰はそれを体現する。
第5章は「人気」の秘密だ。新卒採用のみならず、中途採用試験にもキャリア官僚からキー局アナウンサーまで殺到する商社。“合コン市場”でもモテモテである。人気を支えるのは厚待遇だ。年収は30歳で1000万円、40歳で1500万円が相場。海外赴任なら、新興国でさらに数百万円の諸手当がプラスされる。
こうした強みの裏には、弱点も隠れている。他業界にとってビジネスの参考となるしたたかさと貪欲ぶりの影で、脆さや課題も浮かび上がる。今、一番元気な“雑食企業群”の実像を明らかにした本特集を、ぜひご一読いただきたい。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣)