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岸博幸のクリエイティブ国富論

野田首相の所信表明演説で改めて底が知れた
地味な官僚依存政権

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第155回】 2011年9月16日
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 臨時国会が召集され、野田首相が初の所信表明演説を行いました。報道によると野党は「官僚の作文」など厳しい評価を下していましたが、実際にどの程度の出来なのかを検証してみましょう。

官僚任せ?官僚への配慮?

 おそらく所信表明演説の全文を読まれた方はそう多くないと思いますが、是非ご一読することをお勧めします。野田政権の限界がよく分かるからです。

 演説の最初の部分は、野田首相の人柄と演説のうまさを反映して、ある意味それなりにしっかりとした問題意識が提示されています。しかし、政策の具体論になると、途端に官僚的な“ダメな”表現が増えます。具体的にどうダメかと言うと、3種類くらいに分類されるのではないかと思います。

 第1は、官僚がやりたいことだけはしっかりと記述されているというものです。その典型例は、復興増税や消費税増税といった増税路線です。それは、「復旧・復興のための財源は、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合う」という下りに表れています。先週もこのコーナーで書いたように、これはそもそもおかしな論理なのですが、増税を目指す政治家や官僚の発言は今や、みんなこの一見もっともらしい理屈で統一されています。

 第2は、官僚がやりたくないことはしっかりと骨抜きにされているというものです。その典型例は、被災地の復旧・復興を担う組織となる復興庁の創設に関する下りではないでしょうか。所信表明演説では以下のように記述されています。

 「省庁の枠組みを超えて被災自治体の要望にワンストップで対応する「復興庁」を設置するための法案を早急に国会に提出」

 この表現を読者の皆さんはどう思われますか?私は、官僚による骨抜きの可能性が大きいと思います。

 復興庁を設立する際に重要なのは、復興に関する関係省庁の権限や予算をすべて復興庁に移行して、復興庁が関係省庁に協議せずに自分ですべて決められるようにすることです。しかし、組織防衛を最優先に考える官僚の側にとっては、自分の省庁の権限や予算が奪われることになるので、それは一番避けたい事態となります。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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