経済のグローバル化が進むなか、都市が膨張を続けている。国連によると、2030年の世界人口は約80億人にまで増え、その60%は都市に暮らすようになると予測されている。ヒト、モノ、カネを巡る都市間の争奪戦が激しさを増すなかで、東日本の復興という重い課題を背負ったままの日本の都市は、どのようなビジョンと戦略を持って臨むべきなのか。東京と地方都市という2つのテーマに分け、都市に詳しい2人の識者にそれぞれうかがった。
今回は、「東京」をテーマに、建築家・建築評論家である八束はじめ芝浦工業大学教授に話をうかがう。人口減少が急激に進む日本を襲った今回の大震災。大都市「東京」は東日本の復興において、どのような役割を果たすべきなのか。
(聞き手 フリーライター 曲沼美恵)
人口減少社会で進む東京一極集中
東日本大震災によりその傾向は一層加速
――人口減少のフェーズに突入した日本では今ひそかに、大都市圏への人口集中が同時進行しています。なかでも、東京圏への転入超過数は1987年のバブル期に相当する勢いですが、八束さんはこれをどうご覧になりますか?
じつは、東京圏、大阪圏、名古屋圏という三大都市圏で比較すると、人口が増えているのは東京圏だけです。一般的には、情報化が進めば進むほど地方への拡散は進む、と考えられていますが、実際にはまったく逆の現象が起こっています。
考えてみればこれはあたり前のことで、メディアから受け取る情報が均一になればなるほど、メディアを介さない生の情報を持つことが差別化の重要な要素になります。したがって、ビジネスで成功したいと考える人たちは、日本でもそれ以外でも、富と情報を求めてより密度の高い都市部へと移動していくようになります。
ご存じのように、東京への人口集中が最も激しかったのは1960年代の高度経済成長期です。当時、東京への転入超過数は30万人台を超え、周辺の千葉、埼玉、神奈川などではそうした人々が暮らすベッドタウンの開発が進みました。
地理学で言う東京圏とは、隣接するこれらの地域を含む都市域全体を指す言葉ですが、それで比較しますと、東京圏の人口は約3500万人と、世界的に見てもニューヨーク周辺や上海周辺をはるかに凌ぐダントツトップの都市圏が形成されていることがわかります。
――東日本大震災で、この傾向はどのように変化するでしょうか?