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JAPANなニュース 英語メディアが伝える日本

日本人がやっと抗議したと欧米人が安堵?
数万人の脱原発集会

加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]
【第63回】 2011年9月22日
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英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週は19日に東京・新宿で開かれた「脱原発」集会についてです。あらゆる英語メディアが大きく取り上げたわけでは決してありませんし、取材しなかったところも多いですが、取材した記者たちの文章からは、参加者6万人(主催者発表)という数字に「やっと日本人もデモしたのか」と安堵した様子がうかがえます。(gooニュース 加藤祐子)

2万人と6万人と3%

 東京は新宿区の明治公園で開かれた「さようなら原発集会」について、私がざっと見回したところ、英BBCや米CNN、米紙『ニューヨーク・タイムズ』や米紙『ワシントン・ポスト』といった、おなじみのいわゆる主要メディアはどうも現地で取材していないようで記事が見つかりません。まあ、そういう関心の度合いが、記者の人数も少ない外国メディアとしては順当かなと思います。

 その一方で、いざ蓋を開けてみたら6万人(主催者発表)も集まったからか、現場取材していたAP通信マルコム・フォスター記者の配信記事が、『ワシントン・ポスト』
や豪紙『シドニー・モーニング・ヘラルド』、米紙『ボストン・グローブ』に米ニュースサイト『ハフィントン・ポスト』と、実にあちこちで掲載されていました。

 「原発事故を懸念し東京で数万人が原発に抗議行進」という見出しのこの記事は、「『Sayonara nuclear power(原発さようなら)』と唱えながら何万人もの人が行進したこのデモは、「もう長いこと原子力発電に慣れていた日本の人たちが、いかに(原発事故に)揺り動かされているかを、改めて強調するものだ」と評しています。

 さらに記事は「チェルノブイリ以来最悪の原発事故」によって原発周辺に暮らしていた約10万人もの人が退避を余儀なくされ、果物や野菜、魚や水に至るあらゆるものの汚染が心配されるようになったと説明。8歳から14歳の子ども4人を連れて参加したという43歳女性の「食べ物の安全性がとても心配。子どもたちに安全な未来を残したい」というコメントを紹介しています。また、福島から参加した女性が自らを「hibakusha」と呼んだことにも触れ、「これは広島や長崎の原爆生存者にとって、たくさんの思いが込められた感情的な表現だ」とも解説しています。

 記事は参加者の人数について、警察推計は2万人だが、主催者は6万人と発表していることも説明。一方で、AP通信と調査会社GfKが7月末から8月上旬にかけて共同実施した世論調査によると、日本人回答者1000人のうち55%が、国内の原発を減らしたいと答えたのに対し、現状維持がいいと答えたのは 35%、増やしてほしいと答えたのが4%で、原発の全廃を求めるという人は3%だったことも解説。つまり、今回のデモが必ずしも日本人全体の総意を表しているわけではなさそうだというのが、データの並列によって示唆されています。

 ロイター通信の記事は「過去25年間で世界最悪の原発事故から6カ月、日本の原発依存を終わらせようと6万人が東京都心に集まった」という書き出しで、大阪市内から参加したという39歳女性の「原発政策を変えるなら今しかない。今やめさせなければ、もうずっと無理だと思う」というコメントを紹介。「参加者の多くは福島から来ていた」として、「私たち福島住民はもちろん放射能が見えるわけでもないし匂いがするわけでもないが、広がっているはずだと確信している」という福島から来た男性のコメントも紹介しています。

 被災地や原発周辺、原発作業員の取材を丁寧に重ねている英紙『ガーディアン』
の東京特派員、ジャスティン・マッカリー記者は、「Fukushima protesters」が日本の脱原発を訴えたという記事を書いています。「Fukushima protesters」は「抗議する福島の人たち」の意味にもとれるし、「福島第一原発の事故に抗議する人たち」にもとれる。両方かな、と思います。

 「これほどの規模のデモ集会は、日本ではもう何年間もなかった。警察によると参加者は2万人、一方で報道によると6万人と」と両方の数字を出し、「福島第一の危機が3月に始まって以来、原発に反対する市民の意見表明として最大の抗議行動」だったと説明しています。「福島県の住民を含む参加者たちは、日本の原発の即時全停止、ならびに再生可能エネルギーを中心とする新しいエネルギー政策を求めた」と。

 ちなみに、集会に作家の大江健三郎さんや作曲家の坂本龍一さんが参加していたことは、AP記事は文末で触れていましたが(配信先のデスクが記事を短くするために削るとしたら、文末から削ります。新聞記事も同様でデスクに削られたくない要素はなるべく上の方に書きます)、ロイター記事は4段落目で両氏に言及。このガーディアン記事は著名人参加者として、日本国外でもそれなりにネームバリューのある大江氏と坂本氏の名前をあげただけでなく、「原発に反対したため芸能事務所を去ることになった俳優の山本太郎」氏も紹介。「電力は足りている。このままでは日本は核廃棄物の置き場になる」というその発言も取り上げているのが、日本に詳しく日本語話者でもあるマッカリー記者らしいなと思います。

 ガーディアン記事は、休止中の原発を再稼働しなければ日本は電力不足に陥ると経団連など原発推進派が警告していると説明。そしてそれについて集会で大江氏が、「私たちはそれに抵抗する意志を持っていることを、政党の幹部や経団連に、デモで思い知らさねばならない」と述べたことも紹介しています。

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加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]

1965年東京生まれ。小学校時代を米ニューヨークで過ごす。英オックスフォード大学修士号取得(国際関係論)。全国紙社会部と経済部、国際機関本部、CNN日本語版サイト編集者(米大統領選担当)を経て、現職。2008年米大統領選をウオッチするコラム執筆。09年4月に「ニュースな英語」コラム開始。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」。

 


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