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「インフレターゲットを意識しながら価格を決める小売業はいない」。イオンの三宅香執行役は、プライベートブランド商品の値下げを発表した8月23日に、そう述べた(「日本経済新聞」)。

 確かに、海外で長くインフレ目標を採用している国でも、中央銀行のインフレ目標を基準にしながら価格設定を行っている企業経営者は実際あまりいない。

 ニュージーランドはインフレ目標の成功例として取り上げられることが多い。しかし、オークランド工科大学のSaten Kumar博士らの論文「インフレ目標はインフレ予想をアンカーしていない(いかりで留めていない)」(2015年)によると、同国の2%というインフレ目標を知っている企業経営者は、わずか12%しかいなかったのだ。

 経営者のインフレ予想は、インフレ目標ではなく個人の買い物の経験による影響が強く、その傾向は米国でも観察できるという。

 インフレ目標の効果に懐疑的なアラン・ブラインダー元米連邦準備制度理事会(FRB)副議長は、「大半の人は中央銀行に高い関心を持っていないことをこの論文は思い出させてくれた」と絶賛。中銀が2%と言えば人々のインフレ予想がそこに収斂する、という効果は現実には限られるといえる。