電子たばこの健康リスクに関しては結論は出ておらず、各国の政策もバラバラだ。

 たとえば英国では、ニコチンリキッドを使う電子たばこが禁煙補助剤として利用されている。一方オーストラリアでは、ニコチンリキッドの販売自体が全面的に禁じられている。

 米国食品医薬品局の対応は、その中庸をいくもので、紙巻きたばこ同様に18歳未満への販売を禁止し、包装紙に健康に関する警告を表示するよう指示を出している。

 ところがこの電子たばこ、米国で「紙巻きたばこの禁煙」を後押ししているらしい。

 米国では2010年ごろから電子たばこの利用者が爆発的に増加。現在は全喫煙者のうち、15~30%が電子たばこを利用していると推測されている。

 米カリフォルニア大学の研究グループは、14~15年の全米たばこ調査(CPS-TUS)のデータを基に、電子たばこ利用者と禁煙との関連を分析。約16万人の回答者のうち、直近の1年間に電子たばこを利用した人のほうが、禁煙成功率が高い傾向を認めた。

 この場合の禁煙成功とは、3カ月間は紙巻きたばこを吸わずに済んだケースを指し、禁煙成功率は電子たばこ利用者8.2%に対し、非利用者4.8%。さらに電子たばこ普及以前と以後では、調査対象の集団の禁煙成功率も有意に向上していることが判明している。

 研究者は電子たばこの普及が禁煙成功率に影響したと指摘し「たばこ政策立案の際に、慎重に検討すべき知見だ」としている。

 日本でも電子たばこがじわじわ市民権を得つつある。海外の調査・研究結果を総合すると、電子たばこは、喫煙経験がない若年層で「喫煙の入り口」になるリスクがある一方、筋金入りの喫煙者の「禁煙」を補助する役割が期待できるようだ。禁煙したい人は、英国式に禁煙補助剤として電子たばこを利用する方法もありだろう。

 一方、電子たばこの受動喫煙リスクは未だ不明のままだ。白黒がつくまで、紙巻き、電子にかかわらず非喫煙者や子どもから確実に離れて一服すること。この場合は「推定有罪」が正しい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)