米国市民にとってクレカ情報は命綱

 ハッカーによるデータ流出事件がたびたび起こるため、もう何が起こっても慣れっ子になってしまったようなご時世だが、アメリカで9月7日に明らかになった事件は、かなり例外的なものだ。

 三大信用調査会社の1つ、エキファックス(Equifax)から、最大1億4300万人の個人情報が流出したのだ。

 個人情報流出の人数において、今回の流出は最大のものではない。ヤフーでは、2013年に10億人分、2014年に5億人分の個人情報が盗まれた。数で言えば、今回はその数分の1。だが、その個人情報の内容には、震撼するものがある。

 信用調査会社が持つ個人情報は、名前、住所、生年月日、クレジットカード番号、社会保障番号、運転免許証番号など。もちろん、クレジットカードの利用履歴も含まれ、さらに20万枚のクレジットカードのデータ自体も盗まれていることが追って明らかになった。

 信用調査会社はどの国にもあるビジネスだが、アメリカではことあるごとに信用調査書の提出が求められるので、消費者も無関係でいられない存在だ。家を買うとかローンを組むといった場合はもちろんのこと、就職をする際、あるいはアパートを借りたいといった場合にも、提出を求められるケースがほとんどだ。

 信用調査書では、どんなクレジットカードを持っていて、どこでどういった購入をしており、返済状況はどうなっているかの履歴に基づいて、その人物の「クレジットスコア」が算出され、それがその個人の財力や信用度として理解される。

 クレジットスコアが記載された信用調査書は、エキファックス、エクスペリアン、トランスユニオンといった三大信用調査会社の各社から年に1通は無料で取り寄せることができるのだが、そのスコアにピリピリしている人は多い。

 さて、信用調査会社が持つ個人情報を利用すれば、新たなクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりでき、多くの悪事を他人になりすまして働くことが可能だ。今回のエキファックスで被害を被った1億4300万人という数は、アメリカの人口3億2300万人の半分近い。それだけの数の人々の核となる個人情報が危険にさらされているのだ。