ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

どんなサイバー攻撃よりも危険なのは
組織に潜む「隠ぺい体質」

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第24回】 2016年9月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

「入られない」ことを前提にした
セキュリティ対策は完全に時代遅れに

 今回のテーマも、これまで何度もとりあげてきたサイバーセキュリティについてです。私は、この5月以降、米国や英国、フランス、シンガポール、イスラエルなど9ヵ国以上で、イベントでの講演、参加者との議論などを行ってきましたが、その中から興味深い話をいくつか紹介したいと思います。

(1)サイバー犯罪者の昨今の動きについて

 世界には多くの国がありますが、国によってモラルは大きく異なります。ある国ではサイバーセキュリティを担当する公務員が、アルバイトで悪事に手を染めることも少なくないそうです。また、データを「コピーする」のは、盗んだことにはならないという国や地域もあります。その理由は、元のデータは残っているんだから盗ったことにはならないから、だとか。世界は広いんですね。

 最近、話題となったサイバー犯罪は、ある国の政府機関に侵入し、ハッキング情報のデータを半分公開して、残りを公開されたくなければビットコインを送れ、という脅迫行為です。ソフトウェアの中には「ゼロデイ」、つまり、脆弱性が発見されたものの解消する手段がない状態で脅威にさらされる状況のものもあって、関係者は青くなっています。ちなみに、 脆弱性が発見されて修正プログラムが提供される日を「ワンデイ(One day)」といい、それより前にその脆弱性をアタックすることは「ゼロデイ攻撃」と呼ばれています。

 サイバー犯罪のニュースは、この数ヵ月で一気に増えたような気がします。以前は「企業には2種類あって、ハックされた企業か、ハックされたことに気づいていない企業だ」とよく言われていました。それが最近は「企業には2種類あって、盗むに値するデータを持っていてハッカーに狙われる企業か、大したデータを持っていないから狙われない企業だ」と言われています。もちろん、ジョークですが、ハッカーに狙われることが会社の名誉みたいに言われているんですね。

 サイバーセキュリティでは、「入られない」ことを念頭に置いた防御は、この連載でも何度も言っているようにもはや時代遅れです。これでは、いったん侵入されたら犯罪者のやりたい放題になってしまうからです。あるいは内部者の犯行だったときには、最初から社内ネットワークのどこにでも入っていくことができてしまいます。

 ですから現在は、社内でさえも信用できないという前提の下、常に検証し続ける「ゼロ・トラスト」の発想で、いろいろな段階で防御するセキュリティに取り組むことが世界のトレンドとなっています。リアルの世界でも、たとえば経理部のフロアに営業の人間が用もなくウロウロしていたら、「こいつはおかしい」となるはずです。それと同じように、すでにアルウェアや悪意のある社員が社内ネットワークに入り込んでいることを前提に、すべてのトラフィックの検査、ログ取得などを徹底し、重要な情報の流出を防ぐための多層的な対策が必要なのです。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
IT&ビジネス
関連記事
クチコミ・コメント
facebookもチェック

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。

ご意見は、ツイッター@whsaitoまで。

 


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

⇒バックナンバー一覧