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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

日本の温泉の魅力を脅かす中国の温泉ブーム

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第73回】 2011年10月6日
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 日本観光の魅力を語る時に絶対はずせないキーワードがある。温泉だ。特に露天風呂の魅力に惹かれ、わざわざ大金をはたいて日本を訪れる観光客も多い。1981年、外務省の招待ではじめて日本を訪問した私は、箱根小涌園の温泉と露天風呂に感激した。留学生時代に訪れた冬の群馬の水上温泉では、枝に雪が載った松の下で露天風呂につかりながら飲んだ雪見酒がことのほか美味しかった。露天風呂に浮かぶ盆と日本酒、雪に覆われた小道、木々に降り積もった雪に映える松の青さ、そして温泉の湯気、映画のシーンに身を置いているような美しくて幻想的な景色が、私の心のフィルムに焼きついた。

 それ以降、多くの中国人に日本の温泉を勧めた。留学生時代の思い出であるが、当時私は日本の設計事務所でアルバイトをしていた。2001年に経営破綻した青木建設関連の仕事が多かった。主に設計図面の中国語訳を担当していたが、来日した中華圏からのお客さんの通訳も時々つとめていた。

 ある日、台湾からのお客さんから、どの季節に日本のどこを訪問したらいいかと聞かれた。ちょうど紅葉が終わった頃だったので、雪見酒を飲みながらの冬の露天温泉を勧めた。春節(旧正月)の前に、突然、青木建設から観光団に同行する通訳の仕事を頼まれた。なんとその台湾のお客さんが20名の大家族でやってきたのだという。

 このように微力ながら、日本の温泉を多くの中国人に紹介してきた。事実、観光や出張などで日本を訪問した中国人のほとんどが日本の温泉を体験している。遠くへ行けない場合には、時々、中国からのお客さんを木更津にある龍宮城に案内する。伝統的な温泉のほかに、スパや温泉プールもある施設だ。最初に利用した時はそこそこ感心していたのだが、先週またお客さんを連れて行ったところ、ジェット風呂のスイッチが壊れているところが多かったせいもあって満足感を覚えず、むしろある種の危機感を募らせた。

 なぜかというと、最近は中国を訪問した時によく温泉を利用しているからだ。2005年、重慶を訪問した私は地元の友人にぜひ体験してほしいと勧められて、郊外の天賜温泉を案内された。テーマパーク的な温泉リゾートだった。友人の言葉の通り、「丸一日滞在しても飽きないほど」の観光施設だ。規模の大きさや施設の豪華さには感心したものの、まだそれほど驚かなかった。広大な中国にはたまにはこういった施設もあるだろうと思ったからだ。

 ところが先月、訪問した雲南省騰沖県と安徽省の黄山でも同じような大規模なテーマパーク型の温泉施設に案内された。ハーブ湯にワイン湯、サウナに冷水浴、女性向けの漢方湯もあれば男性の健康によいと言われる風呂もある。露天風呂の近くには冷たいお水はもちろんのこと、さまざまな飲み物も用意されている。至れり尽くせりのサービスと言っても過言ではない。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


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地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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