創立100周年を迎える2037年に向け「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」の実現を長期ビジョンに掲げるNIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)。

今後も成長を加速させ、売り上げ収益4兆円(うち海外売上高2兆円)、事業利益率5%超、ROE10%超という高い目標に到達するためには、従来と異なるレベルでの変革のギアアップが不可欠となる。特に株主資本コストを上回るROEを実現し、PBR1倍超を維持する資本効率化が急務となっている。

同社CFO(最高財務責任者)で経営戦略本部長を務める大槻秀史専務執行役員は「これまではP/L(損益計算書)を重視し、B/S(貸借対照表)についてはあまり強く意識してきませんでしたが、海外投資家からも評価され、グローバル市場で勝ち残っていくためには、投資家と同じ目線やレベルで経営を行う必要があります」とBSマネジメント強化にシフトした理由を語る。

低収益不動産の売却 5年間で1500億円規模

具体的な取り組みの一つが低収益不動産の売却による資産の入れ替えだ。25年12月、東京都江東区にあるグループ最大の物流拠点「Tokyo C‐NX」を1000億円以上で売却したことからもその本気度がうかがえる。同時に現行の経営計画期間(24~28年度)における売却計画を500億円から1500億円に引き上げ、26年度も200億円規模の売却を見込む。

低収益不動産の洗い出しは、案件ごとに時価ROIC(投下資本利益率)を算出し、5%を下回る不動産を売却候補に選定。現在、約200拠点をリストアップしており、顧客との契約状況や収益改善の可能性などを考慮しながら、売却またはセール&リースバックなどの方針を決定していく。

低収益不動産の売却は投下資本の圧縮によるROIC改善に寄与するだけでなく、国内ロジスティクス事業の収益改善にも貢献する。自社保有倉庫の場合、PL上では土地のコストが反映されず、建物などの減価償却が進めば維持コストを抑えられるため、相場よりも賃料を安く設定することができる。「それがこれまでの当社の“勝ちパターン”でしたが、それでは投資効率の向上にはつながりません。今後は近隣相場や時価を意識した料金に見直していくことで、収益性を向上させていきます」。国内の倉庫は今後、賃借を中心としたライトアセット志向に切り替えていく。「いかに資産を維持・保有するかという従来の方向性から、いかに効率よく事業を維持・拡大するかに考え方やマインドセットをシフトしていくことが重要です」と強調する。

また、低収益事業の整理やノンコア事業の売却を通じて事業ポートフォリオを見直し、高収益事業へのシフトを加速するほか、政策保有株式の縮減も推進。さらに、自己株式取得も当初計画の600億円に加えて500億~1000億円を追加するなど、過去にないレベルでの資本構成の最適化にも着手している。現行の経営計画期間中に3000億~3500億円規模の借り入れにより適切な財務レバレッジを実現していく。

キャッシュ創出で海外M&Aを加速へ

不動産売却などで生み出したキャッシュは、海外でのM&Aをはじめとする成長投資に充てていく。当初想定していた2000億円の資金枠は、24年のcargo-partner社(オーストリア)、25年のSimon Hegele社(ドイツ)の買収でほぼ使い切ったことから、新たに2500億円を積み増し、経営計画期間中の総額として4500億円を確保。ターゲットとなるのは、(1)非日系企業など新たな顧客基盤の獲得、(2)航空・海運フォワーディング事業の取扱量拡大、(3)重点産業(テクノロジー、モビリティ、ライフスタイル、ヘルスケア、半導体)の機能強化――に資する分野。

「含み益」依存からの決別!「総合物流の巨人」が断行する、持たざる経営と資本効率の追求2024年にグループ化したcargo-partner社

エリア面では直近のM&Aが欧州に集中したことから、米州などそれ以外のエリアを想定する。「海外でのM&Aは非日系など新たな顧客の獲得に直結します。海外での成長スピードをさらに速めるために、オーガニック戦略とM&Aによるインオーガニック戦略をバランスよく展開していきます。資金面での調達余力はまだあるので、枠を上回る規模のM&Aにも対応可能です」と語る。

他方、日系企業の進出が進むインドでは現時点で、M&Aよりもオーガニック戦略に軸足を置く。「自動車や半導体などの工場近隣に自社投資による倉庫を整備することで、旺盛な物流需要に積極的に対応していきます」。

ますます重要となるアジアでの圧倒的強み確立

26年度は現行の経営計画期間の折り返し年度に当たる。最終年度の28年度に売り上げ収益3兆円、営業利益1500億円、ROE10%以上の目標を達成するため、今期は売り上げ収益2兆7000億円、営業利益1000億円、ROE7%を中間目標に置いた。

「グローバルでの事業環境は、地政学リスクの高まりや米国の関税政策によるサプライチェーンの見直しなど厳しい状況にあるが、その中でますます重要になるのが、アジアでの存在価値をいかに高めることができるか」だという。航空や海運フォワーディング事業における日本を含むアジア発着貨物は世界全体の5~6割を占める。競合相手となるメガフォワーダーの本拠地が欧米に集中する中、アジアを代表する総合物流会社としてまずはアジア域内で圧倒的な強みを確立することが、欧米での事業拡大にも直結すると説明する。

「長期ビジョンで掲げるグローバル市場での飛躍的な成長を実現していくためにも、企業価値向上と稼ぐ力の強化という両輪を回していくことで、さらなる成長投資を実行できる好循環をつくり出していきます」と展望する。

●問い合わせ先
NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社
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